爬虫類のハンドリングの注意点とメリットデメリット(ストレスを考える)
はじめに
今回は爬虫類のハンドリングについて詳しく解説していこうと思います。爬虫類ではハンドリングは良くない事とされていますが、ハンドリングが散歩と同じ意味の場合は非常に良い事です。
ハンドリングとは
ハンドリングとは、人間が爬虫類を手に取り愛でる事です。多くの爬虫類は人間に懐くことはない為、ストレス要因の一つとされています。
ハンドリングのデメリットとは
ハンドリングはストレス要因となります。爬虫類のほぼすべての種類は人間に恐怖心または敵対心を抱いており、その人間に対して体を触られる事は「外的ストレス」の大きな要因であり、特に樹上性生物は人間のハンドリングは死に直結することがあります。
犬猫と異なりスキンシップによる爬虫類の幸福度の向上はないとされています。
ハンドリングのメリットとは
デメリットのに対してハンドリングは「散歩」という考え方もあり、それらはストレスの解消に大きく貢献します。特に穴倉を模して狭い空間で飼育している場合はハンドリングは有効であると考えられています。ただし、狭い空間で飼育する事自体が、動物福祉の倫理に反することである為穴倉を模した環境で飼育することはいい事ではありませんが、日本の住宅環境上、1匹1匹に成長に合わせて大きなケージを用意するのは安易ではなく、また、日本の居住空間は家具が多く狭い空間が多い事から、ハンドリングせず部屋に散歩させていると見失ってしまいため、ハンドリングの方が良いかもしれません。
ハンドリングが明確に良くないとされている種類
ハンドリングが明確に良くないとされている種類として、樹上性のトカゲ類、樹上性の蛇、水を好む爬虫類が有名で、例に挙げると、トッケイヤモリや、グリーンパイソン、エメラルドツリーボア、水を好む爬虫類だと、鰐、アナコンダなどになります。また、元々はクレステットゲッコーも樹上性の爬虫類としてハンドリングは良くないと考えられていましたが、昨今では、人間による繁殖が盛んであり、人間をなんとも思わない個体も多くいます。これらの大きな共通点としては、「自分と同じ種類以外すべて敵」と思っている爬虫類達です。逆に同種であれば、鰐、グリーンパイソンなど、一つのケージで数匹飼育可能と言われています。「コミュニティに対して社交的」と位置付けられている爬虫類は、自分と違う種類の生き物に対しては、排除したいくらいストレスを感じることになるので、人間からのハンドリングはストレートに言えば、「殺したいくらい嫌な事」です。
「自分と同じ種類以外すべて敵」と先に言いましたが誤解を防ぐために、より詳しく言うと、爬虫類の多くは、「自分と同じ種類でもすべて敵」が普通で、よく言う、縄張り争いはこのことです。ですが、「自分と同じ種類以外すべて敵」=「コミュニティに対して社交的」な種類は縄張り争いはほとんどの場合起こりません。グリーンパイソンであれば横並びでいても喧嘩は起こりませんし、鰐の場合は群れを形成します。
拒絶反応の例
拒絶反応の例としては以下が有名です。
- 相手に対して攻撃する
- 相手に威嚇する
- 相手に糞尿をかける
- 必死に逃げる
これらは拒絶反応として多くの爬虫類で共通しています。またこの4項目だけではない事に注意が必要です。これら+α、種類ごとにストレス反応が追加されます。ボールパイソンであれば、まるまって動かなかくなる。グリーンパイソンであれば動き回って落ち着かない。アナコンダなどの狂暴種であれば、噛みついて殺してこようとする、レオパであれば、ものすごい速度で手足をバタバタさせる、コーンスネークであれば顔を平べったくして、しっぽを地面にたたきつける。セイブシシバナヘビは、糞尿をかけてきたりコブラの様に首下を平べったくしてシューシューと音を立てます。また、蛇類がハンドリング中糞尿をした場合、それらは、逃げる為、体の体重を落とすのが目的とされています。
拒絶しなくなる(人間に馴れる?)
馴れるとは「なつく」と言う意味にちかいものであり、訓練された犬などに対しても「馴れる」と使われますが、爬虫類は人間に馴れることはありません。人間に馴れる事ができる動物は数少なく、犬、猫、ラット類、サル類など、高度な知能を有する生物でのみあります。
正確には「興味が無くなる」
生物学で特に海洋学では、互いに違う種族の場合喧嘩するのはお互いに興味があるからだと言われており、喧嘩しなくするには、お互いの興味の分散、またはほかに興味を引くものを用意することが良いとされており、主には前者の、興味の分散により喧嘩させなくするのが一般的です。例えばアロワナの飼育でも2匹だと興味の対象が固定されてしまい、喧嘩をしてボロボロになってしまいますが、3匹以上で飼育する場合興味の分散を図れて、ボロボロになる事を防ぐことができます。ただし、すべて爬虫類にいえる事ではありません。
適切なスキンシップ
これらの考えを元に爬虫類と適切なスキンシップ、ハンドリングを行えるようになるには、人間に対して興味を無くすことです。結論から言えば、「嫌なことをしなければ勝手に仲良くなります。」
日頃の餌やり、水替え、メンテナンスを繰り返すうちに人間に対して興味を無くし、威嚇などの拒絶反応を示さなくなります。これは私も経験上とても同意できる考え方です。爬虫類店でもYouTuberでもお迎え当時は、ハンドリングは絶対にしないでください。など言いますが、本当に大切なことです。お迎えして最初から、人間が嫌な存在と記憶させてしまうと、人間が敵という考えを変えるには時間がかかります。
お迎えしてからハンドリングできるまで
ハンドリングの目安は、簡単で、人間を見ても逃げない、人間が近づいてきても威嚇してこない。これが明確な安全にハンドリングする目安ですが、より安全にハンドリングできるためにはお迎えからの1ヵ月間の人間の行動です。
お迎えして最初は、不慣れな場所に来たため、不安な状態になりしばらく動き回り、ストレスを感じている事でしょう。これを「不穏」と言います。人間も同様、環境が変わると不穏状態に陥り、周囲に対して警戒し、脳が活性化している状態です。この時に受けた衝撃や人間の行動は強く記憶されます。
・お迎え当初はケージ内に水を入れて餌は絶対に与えない。
・水は毎日か二日に1回変える。
・お迎え1週間後、餌を与えてみる。食べなければさらに1週間後与える。
・お迎え後3週間後、威嚇などの反応がなければ、ハンドリングしてみる。
このようにしっかり時間をかければ、人間は敵ではないと記憶して威嚇してこなくなります。
ハンドリングの頻度と時間
よく聞かれるのがハンドリングの頻度と時間です。どのくらいハンドリングしていいのか、どのくらいの頻度でハンドリングすればいいのかですが、最初は数分間、そして徐々に時間を伸ばしてやれば、永遠とハンドリングできます。ただし頻度は難しく、その個体の成長具合や、何年連れ添っているのかで変わってきますが、1週間に1回が無難だと思います。爬虫類の飼育に馴れると、いつ触ってもいいかがわかってきて、ハンドリング危険日以外はどんどんハンドリングできるようになります。
ハンドリング危険日
絶対にハンドリングしてはいけない期間と言うのが存在します。それは、蛇類であれば給餌の前後と給餌してから5日間です。トカゲ類の場合はほぼ餌を食べるのでそのような給餌に関しての危険日はありませんが、爬虫類共通の事で、脱皮傾向が見られた場合は脱皮が完了するまでハンドリングはできません。
おまけ
人間の手によるやけど
よく誤解があるのが、人間の体温は36度前後であり人間が生き物を触るとやけどすると言われていますが、医療福祉施設の経営者のわたしから言わすと、それはデマです。
人間の体温は、脳、臓器(直腸)などのコア温度、その外側の腋(わき)などのシェル温度の二つに分けられ、市販の体温計で図っている温度はシェル温度になります。コア温度はシェル温度に比べ1度以上高いです。そして重要なのが、外界温度と言われる、シェル温度が外気と触れている所、つまり腋以外の体表はコア温度より約10度低いです。つまり、腋下(ワキ)ではかる体温計で36℃ど出た場合、コア温度は37℃、シェル温度は36℃、体表の温度は27℃で、手や足先などの末端温度はより27℃より低い温度と考えられています。また余談ですが、温度でいえば、人間の皮膚と外の空気の間にオーラの様に中間温度が存在して、その中間温度は人間の体表と外気の中間の温度です。また表皮が水で濡れている場合は、水と空気の熱比率が異なり、冷たい空気に触れている事より冷たい水に触れる方が体温をはやく下げることができます。つまり魚を持つと、魚がやけどをすると言われていますが、魚自体が20度前後の水で濡れているので、数秒間持ち続けていると身の色が変色します。ただし、人間が魚を触る前に手を水で冷ましている場合などはそれには該当しません。また、海水魚は特にその影響を強く受ける為、川魚よりより熱い鱗をしています。人間の温度を早く下げる際は我々医療福祉従事者は、腋下(わき)もしくは、鼠径部(股)に冷却材を施工してコア温度自体を下げます。