爬虫類の致死遺伝:白化個体が死ぬ理由

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爬虫類の致死遺伝:白化個体が死ぬ理由

爬虫類の致死遺伝は良く耳にする言葉です。致死遺伝と言う言葉はとてもインパクトがでかい言葉ですが、いろんな意味をもった言葉です。今回はその致死遺伝を解説していこうと思います。

致死遺伝とは?:複数の言葉の意味

 致死遺伝とは、とある遺伝子ととある遺伝子の組み合わせで死んでしまうと思う方がいると思いますが、正確には違います。致死遺伝という言葉には複数の意味がありますが、今回は、爬虫類の致死遺伝に注目していこうと思います。致死遺伝は以下の意味を含みます。

致死遺伝と疑わしき現象

 致死遺伝とは、両親から受け継いだ致死遺伝子がホモ結合を行った場合、または、産まれない場合、卵の中である程度まで成長して死ぬ場合、卵の中での成長過程を済ませたが、卵から出なかった場合、生後数日または数ヵ月で死ぬ場合、通常の個体と比べ寿命が短い場合。これらの条件に当てはまり、死んだ場合、致死遺伝による死が疑わしいとなります。

理由の細かい分類

 それらの複数の死因は以下の事が原因と言われています。

モルフの中の一つの遺伝子が致死遺伝子

 よく言われている特定のモルフと特定のモルフの組み合わせは致死遺伝。と言うのはこれに当たります。先に書いた、致死遺伝子のホモ結合による死です。より正確に言うには、「特定のモルフの中の一つの致死遺伝子と、相手の特定のモルフの中の一つの致死遺伝子をそれぞれから継承した場合。生まれる子供は致死遺伝子をホモに持つ。」重要なのは、その特定のモルフと相手の特定のモルフが違う場合、致死遺伝子も違う可能性が高い為、致死遺伝子による致死遺伝の可能性は低いです。ただし、同じモルフ同士での交配の場合はこの致死遺伝子による致死遺伝は十分可能性があります。これらの致死遺伝子と言われる遺伝子は、遺伝子が変異したときに染色体上の周囲の遺伝子も同時に変異し、その中に致死遺伝子が発生する場合と、モルフ固定を行うときに、インブリードを繰り返して致死遺伝子が発生すると言われていますが前者のパターンの方が多いようです。これらの理由で、インブリードは危険。同じモルフは危険と言うのが広まっています。これらの繁殖方法は「多様性の欠如」と言われており良いとされていません。同じモルフ同士で繁殖しても問題がないか十分確認しましょう。

色素障害・色素欠損による致死遺伝:リューシスティックの致死性

 色素障害による致死遺伝の方が、致死遺伝子より一般的です。 爬虫類の多くは黄色を発色させますが、この黄色はカロテノイド(ビタミン)と言う化合物を、黄色色素胞で保管して「黄色」「オレンジ色」「一部の赤色」を発色します。結論から言うと、そのカロテノイドの保管能力、使用能力、保管場所の欠如により死亡する為、成長につれて死ぬとされています。

 では何故、リューシスティックによる致死と言われているのかと言うと、リューシスティックは黒色色素胞、黄色色素胞などの色素胞の発現を阻害し、白化させる遺伝子の総称です。つまり、元々の保管場所をなくしてしまう。または少なくする個体をリューシスティックと呼ぶため「リューシスティックの致死性」と言われています。

カロテノイド類とは

 先の説明で出てきたカロテノイドとは何か。爬虫類はカロテノイドを作成できません。その為、「植物から摂取する。」「カロテノイドを摂取した昆虫や動物から摂取する。」ことでそのカロテノイドをそのまま黄色色素胞や肝臓、網膜に保管します。(爬虫類のカロテノイドの保管場所は体表の黄色色素胞が大部分を占めており、肝臓や網膜は少ししか保管できないことが分かっています。)

爬虫類のカロテノイドの効果

 爬虫類のカロテノイドの摂取効果は以下の事が分かっています。

  1. 抗酸化作用
    カロテノイドは強力な抗酸化物質であり、体内の活性酸素を除去することができます。これにより、細胞の損傷や老化を防ぎ、病気のリスクを減らすことができます。
  2. 免疫機能のサポート
    カロテノイドは、免疫システムの機能向上に寄与し、病気に対する抵抗力を高めることができます。
  3. 視覚のサポート
    カロテノイドの一部は、視覚に関与し、網膜に存在する化合物(例:ルテイン、ゼアキサンチン)であり、眼の健康を維持する役割があります。

 重要なのが抗酸化作用で、このカロテノイドの使用、保管ができない場合、活性酸素が蓄積し、卵から出てきても数日で死に至らしめると言われています。

カロテノイド類に関する致死でのモルフでの例

 先に言ったカロテノイドを黄色色素胞に保管できない個体はなぜ死んでしまうのか?黄色色素胞に保管しなくてもカロテノイド類は爬虫類の場合、目の網膜や肝臓に保管されます。また重要ですが、爬虫類はカロテノイドを作成できず、摂取したカロテノイドをそのまま保管するという事が分かっています。

リューシスティックの致死性の例

具体的な種類で例えると以下に該当します。

ボールパイソンの場合

バナナ

 体全身が黄色いバナナと言うモルフはこのカロテノイドの保管を自力で行う機能が強いと言われています。それ故、アザンティックという黄色欠色を起こす遺伝子とコンボを行っても成長と共に黄色を発色します。また、このバナナと言うモルフはボールパイソンの中でも特殊で、目が紫色の「パープルアイ」と言われます。紫は赤と青の混合により生まれます。先に説明したカロテノイドを黄色色素胞が保管した時に生まれる黄色、オレンジ、一部の赤に一致します。つまりバナナはカロテノイドを保管する量が多いか、自力で保管する能力が強い遺伝子を含むモルフという事です。

 また、ボールパイソンで網膜にカロテノイドの保管ができない、または少ない個体は目の色が青になります。白化個体であるブルーアイリューシスティックも、網膜にカロテノイドの保管ができないか、保管量が少ない為青に見えます。また、パイドと異なり、ブルーアイリューシスティックは体色の白の上に黄色が乗ります。これらは多くの蛇類でも言えることで、白化個体の体には黄色が薄く出現します。その為、致死遺伝とまではなりません。ちなみに、爬虫類の黄色い部位が鮮やかな場合と薄く見える場合があります。それらは、黄色色素胞は黒色色素胞(メラニンの保管場所)の下の層にあり、黒を貫通して黄色色素胞に到達して反射された光が人間の目に届くので、メラニン(黒)がない場合は黄色の観測は困難でとても薄く見えるはずです。

 ちなみに、アザンティックはよく、黄色がない個体と思われるかもしれませんが、正確には黄色が薄い個体で、アザンティックは茶色い部分があります。この茶色は黄色色素胞と黒色色素胞による色で、その部分にはちゃんと黄色色素胞が存在します。逆に、黒い部分が真っ黒で、他が真っ白という個体であれば、黄色色素胞が全くない個体ということです。また、パステルという遺伝子をもった状態で生まれると、将来黄色くなる部位が真っ白の状態で生まれて成長と共に黄色くなっていきアダルトから黄色減退(ブラウンアウト)が始まると他の個体と異なり、黄色が強かった部分は緑色に近い色になっていきます。

レオパ―ドゲッコー(ヒョウモントカゲモドキ)の場合

スーパーマックスノー

 レオパはスーパーマックスノー(スーパーレモンフロスト)というモルフ同士の致死遺伝が有名です。マックスノーであれば、まだ黄色が背中に現れますが、スーパーマックスノーはその背中に黄色がないマックスノーの名前です。また、スーパーマックスノーは目から通常のモルフは黄色ですが、黄色が消えて、真っ黒になります。つまり、スーパーマックスノー自体、カロテノイドの保管能力が弱いモルフであり、スーパーマックスノー同士を掛け合わせるとカロテノイドの保管能力を失い致死遺伝となってしまうという事です。

クレステットゲッコー(オウカンミカドヤモリ)の場合

リリーホワイト

 クレスはリリーホワイトというモルフが致死遺伝で有名です。このモルフもレオパのスーパーマックスノー同様、同じモルフ同士ではスーパーマックスノーと同じ理由で致死遺伝となります。また、リリーホワイト遺伝子を保持している子孫は、食べ物の摂取が困難な場合、生後数日~1週間で死ぬ可能性が高いとされています。これは、クレステットゲッコーのベビーはヤングやアダルトと比べ、カロテノイドの摂取が不可欠である事が原因です。また、赤系のモルフとコンボをすれば、リリーホワイトの特徴でもある、体の白い部分が多くても死なないと言われており、リリーホワイトに関するコンボモルフで高額で取引されているモルフのほとんどが、レッドリリーホワイトがベースです。これは先に説明した通り、レッド、すなわち赤が多くあるという事は、黄色色素胞が多く、カロテノイドの保管、使用能力が高い遺伝子を含んでいるという事です。しかし、ハーレークインもリリーホワイトと同様のリューシスティック遺伝子と言われているのですが、ハーレークインは白化した部位の浸食率がリリーホワイトより少なく、リリーホワイトは個体により、全身のほとんどが白くなるまで白の浸食が起こります。

さいごに

 今回は致死遺伝という言葉、概念の説明にとどめましたが、環境による病気などの致死の誘発は少なくありません。生き物を飼育すると事は、その種族の繁栄への貢献しており、素晴らしい事ですが、むやみやたらに繁殖させるのは良くないため、ぜひ致死遺伝での組み合わせはしないように爬虫類との生活を楽しみましょう。