観賞魚のバクテリア:水槽の健康を維持するための重要性と管理方法

観賞魚

観賞魚のバクテリア:水槽の健康を維持するための重要性と管理方法

はじめに

 観賞魚は、美しい色や興味深い行動で私たちを楽しませるだけでなく、水槽内の生態系を構築する上で重要な役割を果たします。その生態系を維持するためには、水槽内のバクテリアが欠かせません。バクテリアは、水槽内で生物の排泄物を分解し、有害な化学物質を除去する役割を果たします。この記事では、観賞魚のバクテリアについての重要性と管理方法について探っていきます。

バクテリアを管理する方法

 バクテリアは生物濾過エリアといわれる濾過装置の一部にろ材といわれる多孔質構造の物質を投入し、そこに付着し繁殖。水質改善を行ってくれます。バクテリアは一般的には水道水のカルキ(塩素)の影響で存在しておりません。その為、カルキ抜き後バクテリア材を投入し水づくりを行う必要があります。

新規水槽にすぐ魚を入れてはいけない理由

 以降記述していますが、悪性のバクテリアも存在し、その悪性のバクテリアが定着しない為に、水槽立ち上げ時は、1週間から一般的には3週間。生体、水草の導入を行いません。導入までの時間が長く感じるかもしれませんが、良性バクテリアを豊富化させて魚を導入しないと、購入してきた魚についている悪性バクテリア、悪性の菌が良性バクテリアより繁殖してしまいます。

悪性バクテリアのほとんどは生体が居ないとほぼ発生しない

 悪性のバクテリアは生体の排泄物や餌などの有機物を餌として繁殖します。その為、生体を導入しない限り、水槽内に悪性の菌が増えることはありません。

バクテリアを重視した水槽の立ち上げ方

 水槽に必要量の水道水を入れた後、相当量のカルキ抜きを入れます。ヒーターを導入生体に合わせた温度に設定し稼働。その3日後、導入したカルキが浸透。余分な塩素が抜けた頃にバクテリア材を『水槽立ち上げ時の規定量』導入します。バクテリア材を毎日『水替え時の規定量』入れ水道水を入れてから1週間が経った頃に生体を導入し、生体を導入しても3日はバクテリア材を導入し続けます。これは、生体導入直後は生体に餌を与えないことがいいとされているため、バクテリアの餌を維持させて死滅させないことが目的です。これでバクテリアは水槽内に十分補充され、観賞魚にとって良い環境が作れます。ここで一つ注意なのが、導入予定の生体が低水温を好む場合、特に海水魚などの24℃、25℃の場合はバクテリアの増殖に通常の10倍以上の時間がかかる為、海水魚では三か月、生体の導入を控えた方が良いという考えがあります。バクテリア材自体が大きなボトルで販売されているのは、このように、水槽立ち上げ時はかなりの量を使用するからです。すぐに水槽立ち上げを行いたい場合、『ブルカミア』などのソイル自体にバクテリアが入っているものを使用すれば、比較的安定した水質を作り、魚をすぐに導入することができます。

最大の注意点

水槽の温度を上げ下げしたり、生体が居ないのに魚用の餌を入れるとすべてが台無しになります。バクテリアの増殖、バランスは水温に強く依存するため、水温を変えるとバクテリアバランスが変わり、死んだバクテリアが浮遊しそのバクテリアを餌とするカビが発生します。餌も同様に餌自体に白カビが発生し、濾過装置内がカビだらけになります。

観賞魚にとって重要なバクテリア

 観賞魚において以下の3種類のバクテリアは重要な役割をそれぞれ持っています。これらのバクテリアを充実させることが、観賞魚飼育には重要な事です。

ナイトロソモナス菌

これは、アンモニアを亜硝酸に変換するプロセスで重要な役割を果たします。アンモニアは観賞魚の排泄物などから生成されますが、高濃度のアンモニアは有害であり、魚の健康を脅かすことがあります。アンモニアが多い水槽は、アンモニアが有機物と反応し『腐敗臭』がします。

ニトロソモナス菌

ナイトロソモナス菌が生成した亜硝酸を硝酸に変換します。硝酸は、水中で最終的に窒素ガスに変換され、安定した水質環境を維持するのに役立ちます。

バクテリアフィルム

水槽内の表面に形成されるバクテリアフィルムは、さまざまな微生物が共存し、水質を浄化する役割を果たします。これは、水中生物が生息するための重要な環境です。バクテリアフィルムは複数の菌の総称で、特定の菌を示すものではありません。バクテリアフィルムには以下の納豆菌も含みます。

納豆菌(窒素固定細菌)

 最近は納豆菌を導入する試みがあります。(もちろん観賞魚用です。)納豆菌は良性の窒素化合物の生成、水槽内の循環が目的でニトロソモナス菌が生成した窒素ガスにより生成される有害な窒素化合物の濃度低下につながります。ただし、この納豆菌は繁殖しにくく、効果をすぐに得られない為、大量投入してしまい、ほかの菌が減ってしまう可能性があります。規定量以上の量は使用しないようしましょう。ちなみに、納豆菌そのものに水の浄化能力はないので、わざわざ導入する必要はなくあまり重視しなくてもいいものです。

観賞魚にとって有害なバクテリア

これらの有害なバクテリアは、水槽内で適切なバランスが維持されない場合に増殖する可能性があります。水槽内のバクテリアのバランスを維持し、適切な水質管理を行うことで、これらの有害な影響を最小限に抑えることが重要です。

コロニー形成細菌 (CFB)

これらのバクテリアは、水中で植物の表面にコロニーを形成し、水槽内の酸素を消費します。高密度のCFBは、水中生物に対して有害な硫化水素を生成する可能性があります。

病原性バクテリア

水槽内で繁殖する病原性バクテリアは、観賞魚に病気や感染症を引き起こす可能性があります。例えば、アエロモナス、パスツレラ、ヴィブリオなどが含まれます。

青緑藻

青緑藻は、水槽内で繁殖しやすく、水質を悪化させる可能性があります。大量の青緑藻が水槽内に存在すると、水の透明度が低下し、魚の健康に影響を与える可能性があります。

ヘテロトロフ細菌

これらの細菌は、有機物を分解することで栄養を得ます。過剰な有機物は水質を悪化させ、アンモニアや亜硝酸などの有害物質の蓄積を引き起こす可能性があります。

バクテリアのバランスを保つ方法

フィルターシステムの適切な管理

フィルターシステムは水槽内のバクテリアの生息地として重要です。定期的な清掃とメンテナンスを行うことで、バクテリアのバランスを保ちます。

水質テスト

定期的な水質テストを行い、アンモニア、亜硝酸、硝酸などのレベルを監視します。異常があれば、適切な対処を行います。

適切な魚の餌やり

魚の餌やり量を適切に管理し、過剰な餌やりを避けます。過剰な餌やりは余剰の有機物を生成し、バクテリアの増殖を促す可能性があります。

水の交換

定期的な水の交換は、水質を安定させ、バクテリアのバランスを維持するのに役立ちます。一部のバクテリアは水中に浮遊しているため、水の交換によってバクテリアの再生産を助けます。

観賞魚の健康管理においては、バクテリアの重要性を理解し、適切な管理を行うことが不可欠です。バクテリアのバランスを維持することで、美しい水槽環境を実現し、観賞魚たちの健康と幸福を確保することができます。

水の色による水質変化の見極め方

茶色や黄褐色

 茶色や黄褐色(オウカッショク)の場合、タンニンが水に溶け込んでいる場合であり、レイアウト品の流木から出ている場合がほとんどで、確率は低いですが、長期間、使用限度を超えても使用し続けている、フィルターや、木炭から排出されます。通常は、炭を導入すると透明な色に戻ります。水替えによる改善は難しいです。ただ、タンニンによる色の変化はブラックウォーターと言われます。淡水魚では弱酸性を好む生体が多いので有効性はありますが、中性、アルカリ性を好む淡水魚生体、汽水生体(金魚など)、海水生体では有害である為、炭を導入して除去する必要があります。

ブラックウォーターによる有効性

 ブラックウォーターをワザと作り出す飼育者がいます。これは非常に良いことです。ブラックウォーターはフルボ酸といわれる物質で流木や、市販されている『マジックリーフ』を導入することで実現することができます。ブラックウォーターは水質を弱酸性化させPHを弱酸性のまま維持します。また、フルボ酸の影響で生体の表面保護、病原菌の抑制が行われ有効性が非常に高いです。ブラックウォーターはベタ飼育では必須。アロワナでは視認性を下げますが多くの飼育者が行っています。その他ネオンテトラなどはブラックウォーター内でしか産卵行動を行わないとされています。先に記述した通り、ブラックウォーターが危険な種類もいるので注意が必要です。またマジックリーフやブラック化させる物を導入する際は、炭素系のろ材や炭素が入っているフィルターを先にのけないと、容易に透明な水に戻ってしまいます。

緑色

 藻の繁殖によるクロロフィルが原因です。過度な光量が原因な為、消灯時間を見直すと簡単に改善できます。緑化の場合、メダカなどをのぞき多くの淡水魚では酸欠を起こす可能性があります。また藻はバクテリアよりも酸素の吸収速度、量が多く、バクテリアの減少につながります。

白濁

 与えた餌などが解けて、有機物が浮遊している状態です。バクテリア環境が充実している場合、数時間から1日で透明な色に戻ります。1日以上白濁が続く場合、水替えを行います。白濁がなくなるまで毎日3分の1の水替えを行うことをお勧めします。

青緑色

 水替え後以外で、水が青緑色に見える場合、通常はシアノバクテリアの増殖が原因です。シアノバクテリアは、水槽内で繁殖しやすい細菌の一種であり、水面や水槽の壁などに青緑色の膜を形成します。シアノバクテリアは、青い藻と勘違いしやすいですが、菌です。シアノバクテリアが発生した場合、速やかに光量、点灯時間の見直しと水替えが必要です。シアノバクテリアの死骸は有毒物質であり生体の死に直結します。その為、改善されるまで水替えをし続け有毒物質の量を減らし続ける必要があります。シアノバクテリアは光合成により水中の有機物と酸素を消費します。有効性バクテリアより呼吸量、速度共に早く魚の窒息にもつながります。水替え後の場合、カルキ抜きの残りの可能性があります。