爬虫類の危険な感染症ニドウイルスとは?

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爬虫類の危険な感染症ニドウイルスとは?

はじめに

昨今、「ニドウイルスが流行している」とSNS等で話題に上ることがあります。しかし実は、人類がCOVID-19で大きな混乱に陥る以前から、アメリカではすでにボールパイソンにおけるニドウイルス感染が問題視されていました。このため当初、「人間のコロナウイルスは爬虫類にも感染するのではないか」との誤解が生じた時期もあります。後に、それらのウイルスは同じ「ニドウイルス目」に属するが、「コロナウイルス」ではなく、トバニウイルス科サーペントウイルス亜科に分類される別のウイルス種であることが明らかになりました。台湾においても、ほぼ同時期に感染例が確認されておりアメリカでは公的機関が2014年に検知しています。

本稿では、この「ニドウイルス」および「キャリア」という重要な概念について、最新の研究結果を踏まえた正確な情報提供を目的とします。とりわけ注目すべきは、「発症後に症状が消失してもウイルスを保持し続ける可能性が高い」という近年の知見です。

爬虫類店に行った後、飼育個体が死んだという報告も見受けられましたが、感染直後に死に至るとは限らず、多くの個体では一定の潜伏期間や症状の変化を経て発症することが報告されています。

以下ニドウイルスまたはニドウイルスのキャリア特性に関する研究論文及び観測データからAI(GPT4.1)が作成した記事です

※追記※2025年5月27日

以下モルフマーケットでのニドウイルス関係のフォーラムです。ただしこれらのフォーラムの内容はAIへの読み込みを行っておらず本投稿は論文ベースから作成された記事です。マッチワードNidovirus

🧬 MorphMarketフォーラムにおけるニドウイルス関連スレッド一覧

  1. Nidovirus is a Big Problem
    • ボールパイソンの飼育者が、購入した個体がニドウイルス陽性であった経験を共有し、隔離や安楽死の判断、検査の重要性について議論しています。
  2. Keeping Snakes with Nidovirus
    • コーンスネークの飼育者が、呼吸器症状を示す個体のニドウイルス検査と、陽性だった場合の飼育継続の是非について相談しています。
  3. Nido Virus in Ball Pythons
    • ニドウイルスに関する情報をまとめた動画の告知と、関連する情報交換が行われています。
  4. Virus Testing Policy Update
    • MorphMarketのウイルス検査ポリシーの更新に関する情報と、検査キットの利用方法についての案内が掲載されています。
  5. A date with Dr Travis Wyman
    • Dr. Travis Wymanによるニドウイルスに関する研究や見解が共有されており、検査や感染管理についての議論が行われています。
  6. José complex chronic respiratory illness
    • 慢性的な呼吸器疾患を抱えるボールパイソンの症例についての詳細な記録と、ニドウイルスとの関連性についての考察が述べられています。

【超重要】ニドウイルスとは何か — その正しい理解のために

ニドウイルスは“常に発症する”ウイルスではない

ニドウイルスに感染した個体が、必ず病気を発症するわけではありません。この性質は、人間の**ヘルペスウイルス、サイトメガロウイルス(CMV)、エプスタイン・バーウイルス(EBV)**などの「潜伏感染ウイルス」に類似しています。

つまり、感染していても免疫が保たれていれば症状は出ず、他個体に感染を広げる「無症状キャリア」としての存在もあり得るという点が、理解の出発点です。

キャリア型ウイルスは特別なものではない

体内にウイルスを保持しながら無症状で経過する「キャリア」は、哺乳類、鳥類、両生類、魚類、そして爬虫類にも広く存在します。爬虫類においても例外ではなく、完全に無菌・無ウイルスの環境を実現することは非現実的です。

特に爬虫類は、輸入や多頭飼育、異種間飼育を通じて複数のウイルスや寄生虫に曝露されることが多く、その中でニドウイルスも「よくある感染ウイルスの一種」として位置づけられるべきです。


感染拡大の背景と誤解

SNS等で報告された「特定の販売店から購入した個体が相次いで死亡した」という事例がありましたが、実際には購入者の所持している個体の中でそのショップで購入した個体の母数が多く、結果的に目立っただけの可能性もあります

また、問題の店舗以外のルートから購入した個体でも類似の症例が複数確認されており、すでに国内の複数の販売経路にウイルスが広がっている可能性も指摘されています。

重要なのは、販売店が悪いと決めつけることではなく、飼育者自身の管理体制の強化が発症抑制の鍵である点です。

📊 2025年時点の推定保有率(AIによる推定)

ペットの爬虫類におけるニドウイルス(特にサーペントウイルス)の保有率です。最新の大規模な疫学調査は行われていないため、以下の推定は過去のデータと感染動向に基づくものです。

ヘビ類(特にパイソン科)

  • 推定保有率: 15〜25%
  • 理由: 過去の研究で20%前後の陽性率が報告されており、飼育環境や検査体制の改善により若干の減少が見込まれます。

トカゲ類(シャインバックトカゲ、ベールカメレオンなど)

  • 推定保有率: 5〜10%
  • 理由: 感染例は報告されていますが、種によって感受性が異なるため、ヘビ類よりも低いと推定されます。

カメ類(例:ベリンジャーリバー・スナッピングタートル)

理由: 野生個体での感染が確認されていますが、ペットとしての飼育数が少ないため、全体としての保有率は低いと考えられます。

推定保有率: 1〜5%


🇯🇵 日本国内の状況とAI推定

日本においては、ニドウイルスの感染に関する大規模な調査は行われていないものの、以下の要因から推定が可能です:

  • ペット爬虫類の輸入量:日本は世界でも有数の爬虫類輸入国であり、2022年には全世界の輸入シェアの20%を占めています。
  • 人気種の飼育:日本国内では、ボールパイソンやグリーンツリーパイソンなど、ニドウイルスの感染が報告されている種が広く飼育されています。
  • 感染事例の報告:台湾では、ボールパイソンにおけるサーペントウイルス感染の症例が報告されており、アジア地域でも感染が確認されています。

これらの要因を総合的に考慮すると、日本国内のペット爬虫類におけるニドウイルスの保有率は、海外のデータと同様に10%から30%の範囲である可能性が推測されます。

ニドウイルスの分類と感染可能種

  • 分類学的位置づけ
     ニドウイルスは「目(Order: Nidovirales)」であり、ボールパイソンなどで確認されているウイルスは、「トバニウイルス科(Tobaniviridae)」→「サーペントウイルス亜科(Serpentovirinae)」に属します。
     これはSARS-CoV-2などの「コロナウイルス科」とは異なる分類群であり、感染様式や宿主範囲も異なります。
  • 検出頻度が高い種
     1位:グリーンツリーパイソン(Morelia viridis
     2位:ボールパイソン(Python regius
     この2種で報告が多い理由は、検査機会が多いこと(検疫、治療時の検査等)と、飼育個体数が圧倒的に多いことが挙げられます。
  • 他種感染
     現在の研究では、蛇類間の感染だけでなく、カメやトカゲ類への感染も示唆されており、宿主特異性は限定的とは言えません。ただし、それらの論文の記述では「蛇由来である可能性が高い」でとどまっており、完全に同定されたわけではありません。

✅ 確認されている他種への感染例とその解釈

1. カメ類への感染:確認済み

  • 2024年の研究(Parrish et al., Viruses において、オーストラリアの絶滅危惧カメ集団におけるサーペントウイルス持続感染5年間の追跡調査で確認されています。
    • この研究では、カメ個体に長期的なウイルス保有状態が存在し、ウイルス排出も確認。
    • 他の種(ヘビ・トカゲ)と同様、持続感染型である可能性が高いと結論づけられています。

2. トカゲ類への感染:報告あり

  • **Hoon-Hanks et al., 2020(Viruses)**では、ベールカメレオン(トカゲ亜目)におけるサーペントウイルスとオルソレオウイルスの同時感染が報告されています。
    • ただしこの症例は、感染源が特定されておらず、ヘビ由来である可能性が高いとはされているものの、ベールカメレオン自身がウイルス増殖・排出したかどうか(すなわち真の宿主か)には議論の余地があります

感染後に見られる主な症状

  • 口腔内の発赤や粘膜腫脹
  • 過剰な粘液分泌、開口呼吸
  • 食欲不振、体重減少
  • 重症例では肺炎、敗血症、死亡

感染経路と注意点

  • 直接接触:同ケージ飼育、交尾、脱皮殻の共有
  • 飛沫感染:呼吸やくしゃみによる微粒子飛散
  • 間接感染:器具や飼育者の手指を介した伝播

これらの経路は、人間の風邪やインフルエンザなどと同様です。


無症状キャリア・ウイルスキャリアとは

  • 無症状キャリア:感染後も発症せず、他個体に感染を広げる可能性がある状態
  • ウイルスキャリア:長期間にわたりウイルスを保持・排出し続ける個体
    最新研究では、感染後2年以上ウイルスを断続的に排出する例や、陰性と陽性を反復する個体が50%以上存在すると報告されています。

🧪 感染の実例 — 実際に確認されたニドウイルス感染事例

ニドウイルスの感染と発症については、これまでにいくつかの信頼できる研究報告や臨床記録が存在しています。ここでは、それらの中から実際に感染が確認され、重症化や死亡に至った例、および無症状キャリアとして発見された例を紹介します。


🔍 例①:アメリカにおけるボールパイソンの集団感染(Stenglein et al., 2014)

2014年、アメリカの研究チームは、呼吸器症状を呈する複数のボールパイソンを調査し、新種のニドウイルス(後にサーペントウイルスと命名)の存在を突き止めました。感染個体の多くは次第に食欲不振・開口呼吸・体重減少・間質性肺炎などの症状を示し、最終的に約75%が死亡しました。

この研究では、感染個体の複数臓器(肺、肝臓、消化管)からウイルスRNAが検出されており、ウイルスが全身性に広がる可能性も示されています。


🔍 例②:台湾での致死例報告(Yang et al., 2020)

台湾の動物病院で、呼吸器症状と神経症状を示すボールパイソンが搬入され、詳細な検査の結果、サーペントウイルスの感染が確認されました。個体は治療を試みたものの回復せず、死後の解剖により重度の間質性肺炎とウイルス性病変が認められました。

この症例は、ウイルス感染が直接的な死因となったと考えられる初の確定例であり、その後の研究の基礎データとして多く引用されています。


🔍 例③:豪州での無症状キャリア確認(O’Dea et al., 2021)

オーストラリアの研究者らによる広範な調査では、PCR陽性でありながら無症状の個体が複数存在することが報告されました。これらのパイソンは2年以上にわたりPCR陽性を維持し、症状が一度も出ないままウイルスを排出し続けたことが確認されています。

この結果は、ニドウイルスが「症状がない=非感染」ではないこと、そして長期間にわたって他個体への感染源となる可能性を示しています。


🔍 例④:死亡個体からの二次感染の疑い(非公式報告・飼育者観察)

SNS上では、死亡した個体を共用ケージ内に放置していたところ、同居個体にも類似症状が出始めたという事例が複数報告されています。これらのケースは正式な研究報告ではないものの、共通して「死後の体液や環境表面からの接触感染」が疑われており、感染経路としての死後汚染のリスクが現実にあることを示唆しています。


✍️ 実例からの教訓

これらの事例に共通するポイントは次の通りです:

  • 感染個体は全て重症化するわけではない
  • 無症状キャリアでも長期間ウイルスを排出し続ける
  • 死後の体液や器具からの間接感染が疑われるケースがある
  • 感染した場合、発病から死亡までの経過が急激なこともある
  • 診断・隔離・飼育環境の清浄化が極めて重要

これらの実例は、ニドウイルスが「飼育個体の命に関わる病原体であること」だけでなく、感染してもすぐに症状が出るわけではない点、そして無症状感染個体の扱いが極めて重要である点を強く物語っています。

引き続き、冷静かつ科学的な対応が、爬虫類飼育者としての責任であるといえるでしょう。


🌍 海外でのニドウイルスに対する対応

ニドウイルスは、特にアメリカやオーストラリア、ヨーロッパの爬虫類研究・飼育の先進地域で早くから警戒され、対応策が模索されてきました。以下では、各国・各組織における具体的な事例と対応を紹介します。


🇺🇸 アメリカの対応

■ 獣医診療ガイドラインの整備

  • 2014年の初報告以降、アメリカの獣医師会(AAV/ARAV)は呼吸器疾患を有するヘビに対しニドウイルスの検査を推奨
  • 特にボールパイソンとグリーンツリーパイソンについては、RT-PCRによるルーチン検査を推奨する病院が増加。
  • 呼吸器症状を呈する個体には、PCR陽性であってもすぐに隔離し、他個体との接触を断つことを基本対応としています。

■ モルフマーケット等の販売プラットフォームの対応

  • 世界最大級の爬虫類販売サイト MorphMarketでは、感染個体を販売することの禁止や、感染歴を開示しない場合のアカウント凍結事例も報告されています。
  • 販売者向けに「検査証明の添付推奨」「感染歴の開示」などを強く呼びかける方針。
  • ニドウイルスなどの特定の感染症に対しての強制的執行などは求めておりません。
  • 感染症全般に対して、検査の推奨日頃からの適正管理を推奨しています。

■ 展示施設・動物園の対応

  • アメリカの大規模爬虫類飼育施設や動物園では、新規導入個体には最低60~90日の隔離措置を実施。
  • 個体ごとに専用器具・ピンセット・消毒用品を用意するなど、徹底したバイオセキュリティ体制を敷いています。

🇦🇺 オーストラリアの対応

■ 研究主導型の早期警戒体制

  • 2021年、オーストラリアの研究チームが発表した総説では、感染後の長期キャリア化・陰陽性の繰り返しが問題視されており、自然環境下での拡散防止が最優先課題とされています。
  • 国内の動物園・教育施設に対しては、無症状個体のスクリーニング検査移動履歴の厳格管理が推奨されました。

■ 絶滅危惧種保護プログラムへの影響

  • サーペントウイルスは、野生個体群(例:ビルマニシキヘビ・豪州固有のカメ類)への感染も確認されており、環境省クラスの機関によって保全繁殖プログラムの一時停止措置も実施。
  • 特に「外来種経由のウイルス伝播」を懸念し、輸入制限や検疫強化が取られています。

🇪🇺 ヨーロッパの対応

■ EU加盟国での輸入時検疫

  • EU域内では、特定動物種(特にパイソン類)に対して輸入時の検査・隔離期間を義務化している国も存在(例:ドイツ、オランダ)。
  • 陽性反応が確認された場合は輸入不許可または指定施設での長期隔離が求められます。

■ 研究支援とワクチン開発の検討

  • 一部の大学研究機関では、サーペントウイルスの病態解明や抗ウイルス薬・ワクチン候補物質の探索を目的としたプロジェクトが進行中。
  • 特にRT-PCR検査キットの標準化や、マルチプレックスPCRによる同時感染(他ウイルスとの併存)解析などが研究対象となっています。

💡 対応の共通点と飼育者への教訓

共通の対応策説明
新規導入時の90日隔離発病の有無にかかわらず、全個体を一度隔離観察。無症状キャリアへの対策として有効
RT-PCR検査の導入販売者・飼育者ともに、呼吸器症状が出た時点でのPCR検査を重要視
感染個体の情報開示と販売制限感染歴の開示義務や、販売自粛要請により流通の透明性を確保
衛生管理の徹底専用器具の使用、定期消毒、スタッフの着替えや動線管理などを標準化

🗣 総括

海外では、ニドウイルスを「撲滅すべきウイルス」ではなく、持続感染型ウイルスとして“共存を前提に制御していく”病原体として捉える姿勢が主流です。したがって、「感染個体=排除」ではなく、「管理体制を整えたうえでの共生」が基本方針となっています。

これは日本の飼育者にとっても重要な示唆であり、過剰な恐怖よりも冷静な知識と衛生管理の徹底こそが、感染拡大防止の鍵を握っていることを忘れてはなりません。

致死率と管理法

  • ボールパイソンでの致死率:条件によっては75%以上(Stenglein et al., 2014)
    ※ただし、これは対処が一切されなかった場合の数値であり、適切な管理・治療により大幅に改善可能です。
  • 推奨管理方法
    • 生涯隔離が最も安全(最低でも90日隔離)
    • 飼育器具・手袋・水容器などの徹底分離
    • 環境ストレスや温湿度異常の回避
    • 栄養管理(例:ハツカネズミを用いた栄養補給)

🧪 感染の実例 — 実際に確認されたニドウイルス感染事例

ニドウイルスの感染と発症については、これまでにいくつかの信頼できる研究報告や臨床記録が存在しています。ここでは、それらの中から実際に感染が確認され、重症化や死亡に至った例、および無症状キャリアとして発見された例を紹介します。


🔍 例①:アメリカにおけるボールパイソンの集団感染(Stenglein et al., 2014)

2014年、アメリカの研究チームは、呼吸器症状を呈する複数のボールパイソンを調査し、新種のニドウイルス(後にサーペントウイルスと命名)の存在を突き止めました。感染個体の多くは次第に食欲不振・開口呼吸・体重減少・間質性肺炎などの症状を示し、最終的に約75%が死亡しました。

この研究では、感染個体の複数臓器(肺、肝臓、消化管)からウイルスRNAが検出されており、ウイルスが全身性に広がる可能性も示されています。


🔍 例②:台湾での致死例報告(Yang et al., 2020)

台湾の動物病院で、呼吸器症状と神経症状を示すボールパイソンが搬入され、詳細な検査の結果、サーペントウイルスの感染が確認されました。個体は治療を試みたものの回復せず、死後の解剖により重度の間質性肺炎とウイルス性病変が認められました。

この症例は、ウイルス感染が直接的な死因となったと考えられる初の確定例であり、その後の研究の基礎データとして多く引用されています。


🔍 例③:豪州での無症状キャリア確認(O’Dea et al., 2021)

オーストラリアの研究者らによる広範な調査では、PCR陽性でありながら無症状の個体が複数存在することが報告されました。これらのパイソンは2年以上にわたりPCR陽性を維持し、症状が一度も出ないままウイルスを排出し続けたことが確認されています。

この結果は、ニドウイルスが「症状がない=非感染」ではないこと、そして長期間にわたって他個体への感染源となる可能性を示しています。


🔍 例④:死亡個体からの二次感染の疑い(非公式報告・飼育者観察)

SNS上では、死亡した個体を共用ケージ内に放置していたところ、同居個体にも類似症状が出始めたという事例が複数報告されています。これらのケースは正式な研究報告ではないものの、共通して「死後の体液や環境表面からの接触感染」が疑われており、感染経路としての死後汚染のリスクが現実にあることを示唆しています。


✍️ 実例からの教訓

これらの事例に共通するポイントは次の通りです:

  • 感染個体は全て重症化するわけではない
  • 無症状キャリアでも長期間ウイルスを排出し続ける
  • 死後の体液や器具からの間接感染が疑われるケースがある
  • 感染した場合、発病から死亡までの経過が急激なこともある
  • 診断・隔離・飼育環境の清浄化が極めて重要

治療と薬剤研究

  • 臨床治療:抗ウイルス薬による症状の軽減報告あり(通院推奨)
  • in vitroで効果があった薬剤(※研究段階):
    • レムデシビル
    • リバビリン
    • NITD-008
      ただし、ウイルス排除効果(クリアランス)は確認されていません。

推奨される備品と対応

  • 70%以上のエタノール消毒液
  • 10%次亜塩素酸ナトリウム(1:10希釈)
  • 感染疑い個体の記録・管理(例:多頭飼育者向け無料管理アプリ「RepFun」)
  • 信頼できる爬虫類専門の獣医師との連携

日本と海外の対応の差

アメリカでは2014年から公的機関による検出・対策が行われており、カナダ・オーストラリアでも研究・対応が進んでいます。一方、日本では行政の動きは限定的であり、飼育者個人・販売店の責任による感染防止対策が求められているのが現状です。


終わりに

ニドウイルスは、「感染=即死」という種類のウイルスではなく、健康な個体では発病せず共存可能なキャリアウイルスである点が非常に重要です。

感染の有無に関わらず、飼育者がとるべき基本の管理措置(隔離・消毒・観察・栄養管理)こそが最大の防御策です。過剰な恐怖や排除の姿勢は飼育コミュニティに混乱をもたらすだけでなく、本質的な感染対策から遠ざかってしまうことにもなりかねません。ただ、実際の感染率の低さは、いままで過度に対応していた結果であって、感染個体を持っている人が働いてそこの感染は継続しないのかなどに関しては注目しておいた方が良いかもしれません。

参考文献

Stenglein, M. D., et al. (2014). “Ball python nidovirus: a candidate etiologic agent for severe respiratory disease in Python regius.” mBio, 5(5), e01484-14.

Hoon-Hanks, L. L., et al. (2020). “Serpentovirus (Nidovirus) and Orthoreovirus Coinfection in Captive Veiled Chameleons (Chamaeleo calyptratus) with Respiratory Disease.” Viruses, 12(11), 1329.

Boon, M. A., et al. (2023). “Ophidian Serpentoviruses: A Review and Perspective.” Journal of Herpetological Medicine and Surgery, 33(4), 205-216.

ニドウイルスの感染観測関連

年・出典対象動物・検討内容主な知見・結論
2019 (Frontiers in Vet Sci)フォーゲルソンら[米国]飼育下の混合ヘビコレクション(ニシキヘビ科中心、ボールパイソン・グリーンツリーパイソン等を含む)を28か月追跡調査感染したヘビでは感染が持続し、ウイルスの完全排除(クリアランス)は観察されなかった。感染陽性のパイソン個体では有意に死亡率が増加し(28か月で75%が死亡)、未感染個体では死亡なし。
2020 (J Vet Med Sci)ヤンら[台湾]ボールパイソンの症例報告(呼吸器症状とサーペントウイルス感染の確認)患者のボールパイソンでサーペントウイルス感染が確定診断され、全ゲノムが解明された初報告。重度の間質性肺炎を呈し、ウイルス感染が病変原因と推定。治療介入の有無に関わらず感染後の長期生存は困難である可能性が示唆された。
2021 (Frontiers in Vet Sci)オデアら[豪州]爬虫類(ヘビ・トカゲ・カメ)におけるニドウイルス感染の総説および文献レビュー無症状感染や長期キャリアの存在を強調。PCR陽性ヘビの約4割は無症候であるという調査結果や、2年以上PCR陽性を維持した無症状パイソンの報告が紹介され、症状消失=ウイルス消失ではないと結論付けている。
2022 (Viruses, MDPI)マクラフリンら[米国]野生ビルマニシキヘビ(フロリダ州外来個体群)を対象にした縦断・横断調査(318検体、うち44個体を複数回検査)間欠的なウイルス排出(同個体で陽性⇄陰性を反復)が確認された。再陽性時のウイルス配列が初回と同一であったことから陰性は一時的な不検出に過ぎ、感染は持続していると解釈される。著者らはウイルスの完全クリアランスが起こり得るかは未解明であると指摘。
2024 (Viruses)パリッシュら[豪州]絶滅危惧カメ集団におけるサーペントウイルス持続感染の5年追跡研究(※参考:ヘビに関する知見を含む)カメでの長期感染例を分析し、他種(ヘビやトカゲ)においても持続性・慢性感染が報告されている点を議論。特にヘビでは感染後にウイルスを完全排除できた明確な例が報告されておらず、感染成立時に持続感染へ移行するリスクが示唆された。(※最新のニドウイルス関連論文である為記事に記載蛇ではなく亀の調査)
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