【2025年版】ヨツユビハリネズミの飼育方法

哺乳動物齧歯類

はじめに

ヨツユビハリネズミ(学名 Atelerix albiventris)は、アフリカ原産の小型哺乳類で、夜行性かつ単独性という性質から、近年ペットとしての人気が急速に高まっています。特にその愛らしい表情とユニークな針の体表は、多くの飼育者を魅了してやみません。本記事では、これからヨツユビハリネズミの飼育を始めたい方、あるいは既に飼育しているがよりよい環境構築を目指す方に向け、基礎から実践まで幅広く解説します。


1. ヨツユビハリネズミの基本情報

  • 分類:哺乳綱 食虫目 ハリネズミ科
  • 体長:18〜22cm
  • 体重:300〜500g
  • 寿命:4〜6年(飼育下で最大10年)
  • 性格:臆病かつ神経質。馴れれば飼い主の匂いに反応し、穏やかになる個体も。単独飼育推奨。
  • 飼育難易度:温度管理が重要であり、上級者向け

2. 飼育環境の構築

ケージ

  • サイズ:幅60〜90cm以上、奥行45cm以上が望ましい。
  • 材質:足が短く床に穴があれば骨折の恐れあり、金網タイプではなく、プラスチック製やガラス製のケースを推奨。針の引っかかりやすい構造は避ける。
  • 床材:ハリネズミ専用床材。木製チップ。

 必要運動量が多く、特に幼少期から成体まで滑車が必要です。野生時は一晩に数キロ移動するほど運動を行います。足が短く細いが胴体の体重は非常に高い為、床は安定したものを使用します。排尿、排泄頻度、共に多く容易に床材を交換できるものにする必要があります。対してペットシーツや毛布を床材にすると、床材に自らの臭いがなくなりストレスと感じるとされています。他の齧歯類と同様、床材交換を行うときは、すべてを行わず少しは床材を残す必要があります。

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 ハリネズミセット+R70カバーとホッと2WAYヒーター(ケージ内底面に設置)でそろいます。マルチシャトルは爬虫類でも使用されるマルチヒーター(ケージ外の底面に設置)も使用することができる珍しい万能ケージです。私の場合は初期はR70カバーを使用していましたが、何を飼っているのかわけがわからなくなるのでシェルターに毛布を掛けてシェルター内を真っ暗にしてます。夜間でも電気を付けている部屋で飼育する場合はR70カバーは必要ですが、そうでなく、昼夜をきちんと区別させることができるのであれば不要です。冬季は温度維持が難しい場合はR70カバーはおすすめです。また他の動物でもいえることですが、ヒーター類はネットで買うより、大型ショップで購入する方が安い傾向にあります。(時期による)

温湿度管理

  • 理想温度:24〜30℃(低温下では擬似冬眠を起こし、致死的)。
  • 湿度:40〜60%程度を目安に。加湿しすぎにも注意。

温度管理に難易度が高い原因があります。理想温度を2日以上下回ると、疑似冬眠といわる仮死状態になります。復帰には時間がかかる為、パネルヒーターを設置してヒートスポットを用意しましょう。ヨツユビハリネズミは冬眠はしない動物です。温度は常に確認しましょう。

照明

  • 夜行性のため強い照明は不要。自然な昼夜のリズムを維持する程度の明暗差で十分。

爬虫類や特定の鳥類、小動物で必要なUVAなどは特別設置する必要はありません。窓からの明かりで生活リズムを一定化させます。倉庫など完全に明かりが外から入らない場合はUVAを設置または部屋の電気を付けて朝と夜を区別します。

隠れ家・遊具

  • シェルター(隠れ家)を1〜2個用意。
  • 運動用に直径30cm以上の回し車が効果的。
  • 砂場、砂浴び場(必須)

ヒートパネルの上にシェルター一つ、ヒートパネルがない場所にシェルター一つが理想とされます。シェルターは必須ではないですが、ストレスを与えないことを考えると必須と思われますが、私の経験上、シェルターを置いていると人間にハンドリングされても噛みはしませんが、とげを立たせて警戒してきます。砂場は病気予防の観点のみならず、ストレス軽減、体温調整に重要です必ず設置しましょう。砂はハリネズミ用が良いですが、他の小動物用やチンチラ用でも大丈夫です。

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いろいろ試しましたがGexのグラスハーモニーシリーズの砂浴び場が一番砂が周りに散らずに無駄にバスサンドが減りません。ハリネズミは思っている以上に砂浴びの時は暴れます。1日に数回、砂場で何回転もグルんぐるん回るので砂が四方八方に飛び散るのを3面の壁が阻止してくれます。また、設置する時は入り口側を高めにして奥を低くするとより飛散防止になります。


3. 食事管理

水の与え方

  • 床に置くタイプの水のみが推奨
  • 壁掛けタイプを使用する時は動かないように固定、また噛みながら飲むため定期的な交換が必要。
  • 水でふやかすタイプの餌を多く与えている場合は、あまり水を飲まない

水は基本的に床に置くタイプが推奨とされているが、非常に汚しやすい。ある程度成長したらケージ側面に掛けるよくある小動物の水のみで十分。ただし、成体になっていない場合、その水のみまで体が届かない可能性がある為注意。本来は成体でも床に置く水のみが推奨される。

基本の食餌

  • 主食:高タンパク・低脂肪のハリネズミ専用フードまたは高品質キャットフード(総合栄養食)。
  • 副食:ミルワーム、デュビア、コオロギなどの昆虫類(適量)。
  • 野菜・果物:リンゴ、サツマイモ、ブロッコリーなど。糖質・水分が多いものは少量に抑える。

乾燥ミルワークを高頻度で与えるとハリネズミ専用フードを食べなくなります。おやつとして食事以外でハンドリングした時だけ与えるなどにしましょう。またハリネズミ専用フードは、水でふやかすタイプとそのまま与えるタイプの2タイプを用意しておき、交互に与えましょう。ハリネズミ専用フードは水でふやかすタイプが安価でありコスパがよいとされた時期がありましたが、結果としてハリネズミの前歯が研がれず歯が伸びて顎に刺さる病気が増えたといわれています。

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NG食材

  • 乳製品、柑橘類、ネギ類、アボカド、チョコレート等は厳禁。

4. 健康管理と病気予防

主な注意点

  • 肥満:運動不足や高脂肪食による体重増加。
  • 歯科疾患:硬い餌を食べる習慣がないと歯石が溜まりやすい。
  • 皮膚疾患:ダニ、カビ、針の脱落。
  • WHS(Wobbly Hedgehog Syndrome):神経系の難病。歩行異常や麻痺などの症状が現れる。

ケージ外での散歩は通常不要です。また天敵(タカや犬猫、へびなど)が多いことから外での散歩は注意が必要です。よく入浴させる動画などがありますが、通常は危険とされています。動画で入浴させていたり動物用洗剤が体を洗っている映像がありますが、これらはダニが付いていると病院で判断される場合は治療として行います。

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健康チェックの習慣化

  • 毎日の観察で、便の状態・食欲・行動パターンの変化を記録。
  • 月に一度程度、体重測定・針や皮膚の確認を行う。

必ず毎日チェックしなければならないというわけではありません。ただ、病院では体重の増減と排泄の量などは、獣医師さんに聞かれます。事前に把握していることは重要です。


5. ふれあいと慣らし方

  • 初期は無理に触れず、匂いを覚えてもらうことが重要。
  • 毎日短時間、同じ時間帯にやさしく声をかけたり、手から餌を与えることで信頼関係が築かれる。
  • 手袋の使用は飼い主の匂いを遮断してしまうため、素手でのふれあいが望ましいが、針の扱いには細心の注意を。

素手で触れ合うことが重要です。人間の臭いを鼻にあてて把握して、その鼻からでた人間の臭い付き泡を自らの体に塗って自信を安心させます。初期時は噛むことが多いです。噛まれると結構いたいですが、数日で噛むことはやめます。


6. 繁殖について(初級者向けでは非推奨)

繁殖は特別な知識・環境・個体管理が必要であり、軽率な試みは母体と仔の命に関わることがあります。必要があれば専門ブリーダーや獣医師と事前に十分な相談を行いましょう。

 雄雌を同じケージに入れておくとメスは時期になると妊娠します。妊娠時期は日本だと365日いつでも可能です。問題は、メスがオスの繁殖行動を許せば行われます。またグミのような子供を産みます。子供が確認されたらすぐに雄は違うケージに入れましょうほぼ確実に生まれた子供を食べます。また生まれた子供は必ず触れたらいけません。少しでも触れたら育児放棄をしてメスが子供を食べます。また、子供を産むとメスはシェルター内部ではなく入り口で待機して他の物がシェルターに入らないように番人になります。過度な外部刺激はやめましょう。餌は乾燥ミルワームを多く与えましょう。


カテゴリー別モルフ解説

■ ソルト&ペッパー(Salt & Pepper)

  • 特徴:針が白黒混合。顔~腹部はグレー~クリーム色。
  • 遺伝形質野生型(ワイルドタイプ)
  • 備考:最も一般的で安定した体質。飼育初心者にも勧められる。

■ シナモン(Cinnamon)

  • 特徴:針が赤褐色で柔らかい印象。鼻はピンク系。
  • 遺伝形質劣性遺伝
  • 備考:ソルト&ペッパーに比べて温和な見た目で人気。

■ チョコレート(Chocolate)

  • 特徴:シナモンより暗く、深みのあるこげ茶色。
  • 遺伝形質シナモンと同様の劣性遺伝型である可能性が高いが、確証は乏しい。
  • 備考:ブリーダーによって名称の使い分けに差異あり。

■ グレー(Grey)

  • 特徴:背針が薄いグレー。顔や皮膚も灰色調に。
  • 遺伝形質劣性? 劣性とされているが個体差が大きい
  • 備考:他モルフと組み合わさると認識しにくくなる場合がある。

■ アルビノ(Albino)

  • 特徴:針は白、皮膚はピンク、目は赤。完全なメラニン欠乏。
  • 遺伝形質劣性遺伝
  • 備考:視覚障害や紫外線過敏などのリスクが伴うため、飼育には配慮が必要。

■ プラチナ(Platinum)

  • 特徴:全体に非常に薄いグレー〜白銀色。上品な色合い。
  • 遺伝形質:明確な遺伝タイプは不明。スノーフレーク遺伝子との関連が指摘されている。
  • 備考:照明によって見え方が変化する個体もある。

■ スノーフレーク(Snowflake)

  • 特徴:針の30~70%が白く、混色パターンになる。
  • 遺伝形質優性遺伝
  • 備考:針の白化率に個体差が大きい。ソルト&ペッパーに重なる場合もある。

■ フルスノーフレーク(Full Snowflake)

  • 特徴:針が100%白。肌の色で識別。
  • 遺伝形質スノーフレーク遺伝子のホモ接合型
  • 備考:完全白針個体。アルビノとは異なり、目は黒や濃茶。

■ アプリコット(Apricot)

  • 特徴:ピンクがかった淡いクリーム色。目は黒〜赤褐色。
  • 遺伝形質アルビノ系の一変異型とされ、劣性
  • 備考:やや曖昧な定義。アルビノ×スノーフレークの交配で生まれることも。

■ ルーシスティック(Leucistic)

  • 特徴:白い体と針、黒い目が特徴。色素欠乏だがアルビノではない。
  • 遺伝形質:劣性遺伝
  • 備考:視力・聴力の異常リスクは低いが、流通量は極めて少ない。

■ パイド(Pied)

  • 特徴:体の一部に白斑が現れる。針や顔に偏って出る個体も。
  • 遺伝形質優性だが性別差による表現差が報告されている。また、共優性の可能性もあり。
  • 備考:個体差が非常に大きく、「ショーパイド」「ハイホワイト」など呼称にばらつきあり。

■ スプリットフェイス(Split Face)

  • 特徴:顔が左右で明確に色分けされる。非常に希少。
  • 遺伝形質:パラドックスまたは、胚分裂時の突然変異。またはキメラ個体(元双子)
  • 備考:意図的な繁殖は困難。偶発的な個体。

遺伝型モデル例(簡易)

モルフ遺伝型(仮定)発現条件
アルビノaa両親とも保因
スノーフレークS/s or S/S片親でも可
フルスノーS/S両親ともスノーフレーク型
ルーシスティックll両親とも保因
パイドP/p または P/P片親でも発現しうるが、P/Pの方が顕著

ヨツユビハリネズミの発見されている遺伝子は競合しない。つまりはポリジェネリックであり。多因子性遺伝である。(一度に複数の変異を持って生まれてくることができる)

 また、変異遺伝を起因とした死亡事例がなく、致死遺伝子による致死遺伝(急死)はないとされている。

おわりに

ヨツユビハリネズミは、小さな体の中に繊細さと独特の個性を秘めた生き物です。正しい知識と愛情をもって接すれば、非常に魅力的なコンパニオンアニマルとなります。本記事が、皆様の飼育ライフの一助となれば幸いです。