【徹底解説】ボールパイソンのブリードで儲かる?第一種動物取扱業を取りたい人が多い理由とは
はじめに
近年、爬虫類、とりわけボールパイソンのブリーディングに関心を持ち、副業・開業を目指す人が増えています。SNSでは「自家繁殖で収益を上げたい」「脱サラして爬虫類ブリーダーになりたい」といった声も目立ちます。しかし、現実はそう甘くありません。本稿では、第一種動物取扱業の取得要件や、実際に利益を上げられるのかという経営的な視点から、ブリーダー業の実情を冷静に分析します。
第一種動物取扱業とは? – ブリーダーになるための法的要件
令和5年の改正以降、動物取扱業の許認可は全国でほぼ統一され、要件が厳格化されました。
取得の主な条件(動物取扱責任者になるための要件):
第一種動物取扱業の取得要件(2025年時点)
第一種動物取扱業を取得するためには、以下のいずれかの要件を満たす必要があります:
- 獣医師免許を取得していること。
- 愛玩動物看護士免許を取得していること。
- 「営もうとする第一種動物取扱業の種別ごとに半年間以上の実務経験(常勤の職員として在職するものに限る。)、又は取り扱おうとする動物の種類ごとに1年間以上の飼養に従事した経験があること」+「知識及び技術を1年間以上教育する学校その他の教育機関を卒業していること」
- 「営もうとする第一種動物取扱業の種別ごとに半年間以上の実務経験(常勤の職員として在職するものに限る。)、又は取り扱おうとする動物の種類ごとに1年間以上の飼養に従事した経験があること」+「客観的な試験により知識及び技術を習得した証明を得ていること」
実務経験は、第一種動物取扱業者のもとで常勤として半年以上勤務した経験が必要です。アルバイトやパートタイムでの経験は、原則として認められません。ただし、地域によっては、1年以上の飼養経験を実務経験と同等と認める場合もありますが、ペットとしての飼育経験は含まれません。常勤と指定されているのは正社員の場合は、勤務実際と給与支払い実態が公共機関へ提出が行われ正式な所属が証明されるからです。
🔍 注意:知識及び技術を1年間以上教育する学校とは、動物に関る専門学校または大学を示します。常勤とは一般的に1週間に40時間勤務の正社員契約を示す場合があります。
ボールパイソンのブリーダー業で本当に儲かるのか?
仮想シナリオ:アダルトペア20匹で年80匹の子を生産
項目 | 数値(概算) |
---|---|
成体飼育コスト | 餌代 年間 ¥200,000(20匹×¥10,000) |
産仔売上 | ¥1,000,000(80匹×¥12,500)※平均的なモルフ想定 |
粗利益 | ¥800,000 |
会社維持費・法定経費等 | 約¥680,000〜(税金、社会保険、法定支出) |
残利益 | ¥120,000以下(光熱費、設備費除く) |
💡 平均的なノーマル〜低価格帯モルフでは、年間利益は10万円台に留まる可能性が高いことがわかります。
ブリーダーとしての開業=会社経営の現実
ブリーダーを法人化して開業する場合、以下のような固定的支出と税務リスクがあります:
- 法人住民税の均等割(赤字でも約8万円/年)
- 事務所費用
- 社会保険料:給与30万円なら会社負担・本人負担含め約10万円/月
- 税金:利益の30〜40%(所得税・法人税・消費税)
- 設備費:ラック、インキュベーター、照明、温度管理機器 etc.
また、「赤字決算」によって納税義務を回避する“裏技”はありますが、3期連続赤字で融資や信頼性が大幅に低下するリスクもあります。また、ブリーダーとして開設する場所は、開発地域の場合、開業してもよい指定地域か市町村に確認する必要があります。商業エリア、住居エリア、商業可能及び住居可能エリアが厳密に決まっています。
ブリーダーは「数の勝負」?利益構造の本質
数を増やせば利益は出るのか?
理論的には、オス1に対してメス4〜5の比率で累積繁殖数を増やすことで利益率は上がります。しかし:
- 繁殖能力のある高額な親個体は1匹数十万円以上
- モルフの需給変動が激しく、価格暴落のリスクが常にある
- クラッチ数や孵化率には個体差がある
- 飼育スペース、電気代、人手が比例して必要になる
つまり、生産数を増やしてもリスクも比例して増大するというジレンマが存在します。
「似非ブリーダー」として副業にとどめる選択肢
法的グレーゾーンではありますが、以下のような形で副業的に収益化している例も見られます:
- 販売店にアルバイト登録 → 自家繁殖個体を委託販売 → 売上を「歩合制アルバイト報酬」として受け取る
- 所得が年間20〜30万円以下なら確定申告不要(※住民税・扶養に影響する可能性あり)
⚠️ ただし、給与帳簿・保険料・タイムカード提出が義務づけられており、販売店側にもリスクがあります。これらは法の隙間を通る方法である為将来または遡り罰則が発生する可能性があります。
実店舗を持てるなら「自家繁殖→直接販売」が最強
メリット:
- 販売価格を自ら設定できる(中間マージンが不要)
- 顧客対応の柔軟性が高い
- イベント出店にも展開しやすい
デメリット:
- 集客と販売対応に人的コストがかかる
- 第一種動物取扱業+動物用販売施設の登録が必要
- 実店舗が居住地と同一の場合、生活との区別が求められる(建築基準法・消防法上の注意)
⚠️ 動物関係施設に関る消防法に適応した建設基準法や消火設備は各自治体に要確認。
業界動向:爬虫類販売は“縮小”の傾向にある
- 第一種動物取扱業の規制強化により参入障壁が上昇
- 個体価格は高騰傾向(モルフインフレ)だが需要は飽和・減退
- 問屋や輸入業を兼ねた業者が強く、小規模ブリーダーは淘汰傾向
一方で、観賞魚(特にアロワナ、プレコ)、昆虫(オオクワ、タランチュラ、サソリ)などは価格高騰と需要の高まりから、副業ブリーダーの対象として注目されています。
最後に:ブリーダーの幻想と現実
爬虫類ブリーダーという仕事は、ロマンと自由を求めて始める人も多い一方、収支計算や法的整備を誤ると生活すら立ち行かなくなる業種です。
とある有名ブリーダーは、年間4億円の売上を誇る一方で経費が3.7億円、実際の会社の残利益は3000万円以下という実情を語っていたと言われています。
✅ 結論:本格的にやるなら「ビジネス」=「経営」としての意識が必須
✅ 収益を出したいなら「市場理解」と「価格形成のメカニズム」の把握が不可欠
まとめ:あなたにとっての「ブリーダー」とは?
- 税務処理・設備投資・リスク分散を見据えた戦略を組めるか?
- 自家繁殖・イベント販売・副業レベルで収める判断力があるか?
- 「好き」を「収益化」するためのリアリズムを持てるか?
参考法規・資料リンク(2025年最新)
- 環境省:第一種動物取扱業に関する基準
https://www.env.go.jp/nature/dobutsu/aigo/1_law.html - 国税庁:副業の所得税申告ガイド
https://www.nta.go.jp/ - 中小企業庁:事業者向け税務・経費・開業ガイド
https://www.chusho.meti.go.jp/ - 山口県庁環境生活部 > 生活衛生課 > 第一種動物取扱業の登録について
https://www.pref.yamaguchi.lg.jp/soshiki/39/19341.html