肉食爬虫類の餌の栄養素
はじめに
爬虫類を飼育していて、最高の餌は何かなと疑問に思った事があると思います。今回は肉食の爬虫類が摂取するラット、ネズミ、鳥の栄養の違いと、それに伴う爬虫類の成長の違いを紹介しようと思います。
餌による成長と寿命の違い
爬虫類が長生きする為には適切な餌の選択が必要とされています。ただし、その餌が本当に適しているのかは不明であり飼育環境下での寿命は、動物園や水族館と比べると半分以下という残念な結果です。動物園と水族館の違いは餌自体の飼育方法の厳密性と給餌頻度の安定性です。よくあるのが、自宅でネズミやラットを繁殖させており、その餌を与えている多くの場合は、産卵数の減少と寿命に関わっていると考えられています。
自家繁殖と購入餌の違い
冷凍ラットや冷凍ネズミの販売を行っている業者と自家繁殖のラットなどでの大きな違いは床材の交換頻度と餌と言われています。業者は床材を高頻度で交換しており、糞食を防ぎ清潔を保っています。対して自家繁殖は良くて週1の交換しかできません。餌も決まりきった餌しか与えることができず偏りが生れます。特に野菜を多く与えるかどうかが大きく関係があるとされています。
栄養の違い
以下の栄養素の割合は1匹あたりの割合です。グラムあたりではありません。ただし、最後のビタミンAは餌一つあたりのグラムです。ハツカネズミの場合は体重約10g、ラットは100g、鳥は500のサンプルデータを使用しています。
タンパク質
1位(約61%)ラット 2位(約55%)ハツカネズミ 3位(約42%)鳥類
ラットの方が約5%ほどハツカネズミより多い
成長には不可欠な栄養素であり、ブリーダーがラットを与えるのは納得できる量の多さです。ただし、過剰摂取は肥満や早死の要因となります。
脂質
1位(約37%)鳥類 2位(約32%)ラット 3位(約24%)ハツカネズミ
カロリーとなり1gあたり約9キロカロリーとなります。活動する際に必要な栄養であり、内臓機能の維持向上に重要とされています。
カルシウム
1位(約3%)ハツカネズミ 2位(約2%)ラット 3位(約2%)鳥類
骨を形成する為に必要な栄養素です。ただし、カルシウムは粉末で販売されていたり、添加することにより効率よく摂取することは可能です。また、カルシウムは、繁殖させる際にどの程度あげるかにより含有量は異なります。卵の形成に必要、成長に必要と考えられていますが、対して必要性は高くありません。スーパーマーケットのパックの鶏肉の様に骨を取り除いて与える場合は問題が出ます。
ビタミンA
1位(約600g)ハツカネズミ 2位(約150g)ラット 3位(約35g)鳥類
成長と繁殖に大きく関わる栄養であり、これは与える餌により大きく異なります。爬虫類はこのビタミンAの摂取により寿命と産卵数に大きく影響を与えるとされています。ただし過剰摂取した場合は爬虫類の場合は尿酸となり排出されます。尿酸の黄色は吸収できなかったビタミンAです。
特定の餌を与え続けた場合
ラットを与え続けた場合
生まれてから生涯までラットのみを与え続けた場合、多くの結果として早死にと産卵数の減少が起こります。ただし、はやく大きく成長させることができます。これらの結果はビタミンAの欠如により体内に有害物質の蓄積や内臓疾患を起こすとされています。ラットの販売業者が与えている餌を公表していたり野菜を多く与えていると言っているのはこのビタミンAをなるべく多く含むようにしていますよというビジネス的側面があります。それほど、ラットのみは良くはないと言う事です。多くのブリーダーでも成体になるまで(繁殖機能が成熟するまで)はラットを与え、その後は定期的にハツカネズミを与えて産卵前は高頻度でハツカネズミを与えたりします。これらは、産卵数向上目的です。
ハツカネズミを与え続けた場合
ハツカネズミを与え続けた場合、ラットと比べ1匹あたりの大きさが小さい為、1度の給餌に複数匹を与える必要があります。餌の量が少ない場合、成長速度が著しく悪く、3歳の例では、ラットを与えた個体とハツカネズミを与えた個体では2倍以上の体の大きさの違いが出ます。ただし、1度の給餌で適切量与え続けることができればラット同等の成長率にはなりますが、破産してしまいます。成長が悪い為体の大きさが小さく産卵数が単純に少なくなります。もちろん適切量与え大きく成長させればそれ相応の卵数まで上がります。また、爬虫類の体色の黄色や茶色はこのビタミンAの保管による発色の為、体色減退を遅らせたり鮮やかな体色となります。
鳥を与え続けた場合
鳥を与え続けた場合、死にはしません。鶏などの大きな餌の場合は頻度にもよりますが正常な餌として機能するとされています。ただし、ウズラやヒヨコは爬虫類にとっては餌ではなく、おやつ程度の栄養素にしかなりません。人間も鶏肉のみを摂取すると痩せるように脂質としての機能は低いです。一部の例ですが、オスの個体には鳥を与えて安く済ませ、メスにはラットやハツカネズミを与える人がいます。悪い例ではなく、オスはメスと比べ体脂肪率が低い為オスにはそれほど脂質はいらないと考える人もいます。
どの餌がいいのか
最適な爬虫類の餌としては、成体になるまで多くの場合生まれて2年まではラットを与えそれ以降はハツカネズミを適正量を与えるのが一番効率がよく、健康と産卵には良いとなります。ただし、それに限ったわけではなく、長生きしてほしい場合や産卵数を増やしたい場合の最適解であり。長生きを主に入れるのであれば、ハツカネズミを与え続けるだけでも問題ありません。また、冷凍ラットの販売店が信頼性が高くビタミンAの含有量が多い場合はラットでもハツカネズミを与えた場合と同じような結果がでるとされています。
さいごに
これらの栄養素は論文の一部を抜粋している為、平均値でしかなく餌屋さん次第で大きく変わったしまう可能性があります。また、それぞれの栄養素の爬虫類での働きはオーストラリアとイギリスの爬虫類店の研究結果を参考にしています。日本の餌屋さんの情報発信を見ると、有名な店舗の多くは床材は木くずを使用しており、高頻度の交換で糞食を防ぎ糞でお腹いっぱいになるのを防ぐのが重要と考えている店舗もあります。与える餌も煮干しや果物の皮、乾燥野菜など多くの種類の餌とペレットタイプの餌を併用しているようです。床材の木くずも一度煮沸消毒させ、乾燥させて使用しているようです。