【2025年最新版】ボールパイソン飼育完全ガイド – 初心者から上級者まで対応

爬虫類蛇類
提供:管理人 キャリコスーパーブラスト

【2025年最新版】ボールパイソン飼育完全ガイド – 初心者から上級者まで対応


はじめに

ボールパイソン(Python regius)は、温厚な性格とコンパクトな体型から、世界中で人気の高いペットスネークです。特に飼育環境に適応しやすく、初心者にもおすすめされる一方で、飼育経験者からは「初心者には向いていない」と言われ、適切な知識と配慮が求められる繊細な一面もあります。

本記事では、2025年の最新情報と学術的知見を踏まえ、飼育環境・管理方法・注意点から、遺伝的モルフに関する重要情報までを網羅的に解説します。

この記事でわかること【要点まとめ】

  • 引きこもり体質であり狭く高さが低い空間を好む愛される爬虫類
  • ボールパイソンに適したケージサイズと形状の選び方(国内基準と福祉団体基準の比較あり)
  • 成功するための温度・湿度管理の設定値と管理方法
  • 年齢や季節に応じた給餌頻度と餌の選び方
  • 拒食・呼吸器感染など購入直後のトラブル対策と初期対応
  • 水分補給と水浴び行動の理解と正しい管理方法
  • スパイダー系モルフに見られる遺伝性疾患の注意点
  • 最新のゲノム解析とモルフの遺伝的背景の研究成果
  • 飼育環境に対する動物福祉と哲学的な視点の対立と調和

見た目上の特徴

ボールパイソンには、西アフリカの複数地域で捕獲される野生個体(ノーマル)に、微妙に異なる体色や模様の差異が見られます。
その中でも、野生型に見られる体側の模様のひとつが「エイリアンヘッド」(ガーナ産・トーゴ産に多い)と呼ばれています。これは、楕円形または二つの円の組み合わせにより、頭部のように見えるパターンで、ノーマルにおける代表的な模様表現です。

この「エイリアンヘッド」の構成要素である円形部分(かつて「リング」)とそれに続くカーブ状の部分(かつて「フック」)は、現在では一体となって「キーホール(Keyhole)と呼ばれることが一般的です。
モルフ(遺伝子変異個体)の識別では、このキーホールの形状や消失などが重要な手がかりとなります。

ボールパイソンの生息環境と行動の特徴

ボールパイソンは、西アフリカから中央アフリカにかけて広く分布しており、セネガル、ガーナ、ナイジェリア、カメルーン、ウガンダなどの国々に生息しています。

生息地の特徴

  • 主な環境:乾燥したサバンナ、草原、森林の縁、農地など
  • 適応力:自然環境だけでなく、人間活動による開けた土地にも適応しています

日中は地中や地表の巣穴でじっと過ごし、夜になると活動を始める「夜行性・薄明薄暮性」の習性を持ちます。

行動の特徴

  • 隠れ家を好む:野生では、小型哺乳類の古巣や自然の隙間を利用して身を潜めます
  • 登ることもある:特にオスでは、夜間に低木へ登る行動も報告されていますが、これは一部の限定的な環境に見られるのみです

これらの行動はすべて、ボールパイソンが生息する自然環境と深く関係しており、飼育時にもその習性を反映したレイアウトを整えることが重要です。

成長に伴う食性の変化(オントジェネティック・シフト)

以降で紹介する推奨されるケージにおいて、長らくブリーダーから支持される狭く隠れ家を模した環境(指標①)』が良いとされるのはボールパイソンが人生のうち90%は地中や樹木の穴にいるという考察から来ています。また、ベビー時は特に活発に樹上性の捕食行動を見せることが観測されており、ベビー時を除くと人生のほとんどが洞穴で生活している引きこもり体質と言えますが、これらは多くのメスで見られる傾向であり、オスはメスと比べ活発に行動し、捕食行動を限定していえば、メスはヤング期までは樹上性行動を行い鳥の巣の雛などを捕食しアダルトになり一定の体重に達すると、地表性の哺乳類を捕食対処(66.7%)とするとされています。対してオスはフルアダルトまでは活発な樹上性行動が観察され鳥類の雛(70.2%)を主に摂取する観測結果が存在します。【出典:ナイジェリア南東部の熱帯雨林に生息する
python regiusにおける性的サイズの二形性と自然史特性、性差による食性の相違と相関


🔎 もっと詳しく知りたい方へ
[ボールパイソンの自然界での生態【完全解説】]では、野生での暮らしぶりや地域ごとの違いをさらに詳しく紹介しています。ぜひ併せてご覧ください。

飼育環境の基本設計

ケージサイズと形状

ボールパイソンの飼育方法は、個体の生理的行動と種固有の習性に基づくべきであり、そのためにはケージのサイズと形状が極めて重要な要素となります。適切な飼育環境は、健康維持だけでなく、ストレス軽減、拒食予防、行動の正常化にも寄与します。日本においては以下で示す指標①での飼育方法が一般的であると言えます。

指標①:ブリーダー基準の飼育指針(推奨)

実務的な飼育において、長年にわたって用いられてきた経験則があります:

  • とぐろ面積の3倍:とぐろを巻いた状態を1単位とし、底面積がそれを3倍上回るサイズを推奨
  • 長辺+短辺 = 全長:ケージの長辺と短辺を足した合計が、生体の全長以上であること。全辺ではない

これは国内外の多くのブリーダーが採用している経験則であり、特に空間認識が乏しいベビーやヤングには「狭すぎず・広すぎず」の環境が落ち着きを与えるとされます。

日本で多い利用商品(指標①)

YouTubeやSNSでみるヤングからアダルトの飼育ケージで多いのは上記の無印良品の衣装ケースですね。これに、ロック機構をホームセンターで購入して付けます。ベビーにはレプタイルボックスなどがおすすめです。ただし、スネークラックと比較するとすこし広いといえますが、非常に安価で壊れにくいです。無印の衣装ケースを使用する場合は、引き戸側に穴をあける必要があるのと、背部にヒートケーブルを通す穴を設置してそのケーブルでホットスポットを作る必要があります。ヒートパネルも利用できますがそのような単独飼育をするのであれば指標②がおすすめです。

指標②:動物福祉団体が推奨する広い環境

一方、近年ではヨーロッパ諸国を中心に、行動学的福祉(behavioral welfare)に基づく飼育ケージの拡張が求められています。たとえば以下のような推奨が存在します:

  • The Federation of British Herpetologists (FBH) の提言では、成体のボールパイソンに対して長さ120cm × 幅60cm × 高さ60cm以上のケージが望ましいとされています。
  • Reptile Welfare UK は、個体が完全に体を伸ばして移動できる広さ(約1.8m)と、複数の温湿度ゾーンを確保できる空間的余裕を福祉の基本要件としています。

これらの考え方は、単に「生きられる」ではなく「本来の行動を発揮できる」ことに重きを置いています。とくにイギリス王立獣医師会(RCVS)では、「飼育ケージの長さが最低でも全長の1倍以上、理想は1.5倍以上」との記述があります(RCVS Animal Welfare Foundation, 2022)。

日本で多い利用商品(指標②)

グラステラリウム9045でも動物福祉団体の主張に合わず小さいかもしれません。最低でも120㎝は欲しい所ですが、大型ケージのレベルになると自作の方が安い傾向もあります。おすすめ動画のリンクはこちら

私がしていた単独飼育(4匹)時は6045でした。6045でもエンリッチメントを設置して野生環境に近づけることはできますが、基本穴の中にいるのでやめました。(当時オスは動き回っていた印象があります)

日本では指標①がおすすめ

サイト的に②をお勧めしないといけないのですが、今までの飼育で利用されている①を推奨します。ボールパイソンは(特にオスは)樹上行動を行える環境において、狂暴化と拒食傾向の長期化が確認されています。特に初心者であれば指標①をお勧めします。

最高の環境を目指すなら指標②

多頭飼育を目的としない、大きなケージを設置する余裕がある。それらの場合は指標②の環境福祉に考慮した設計の方が、観察しやすく本来のペットという役割を十分に満たすと思われます。また、ストレスの緩和作用などの効果も非常に高いとされ『健康的な飼育環境の実現』が行えます。

最適な飼育環境・適した飼育環境とは?

「爬虫類の最適環境」とは、その種が持つ生理機能(代謝、免疫、行動)を最大限発揮できる温湿度・照明・空間条件の組み合わせです。特に低い温度では免疫力の著しい低下が観測され、他爬虫類より感染症への高い感受性が確認されていることから、高温状態(30~32℃)だと高い自然免疫を発揮するが、それでも、感染症などに対しては極めて弱いとされています。それ故、安定した湿温度の実現(急激な温度湿度変化は出さない)で生理機能の安定化を図り、病気の多くの原因と言われている「ストレス」を与えない環境を目指すべきだと言われています。


ケージ内に必要な要素

■ 床材の選択

  • ペットシーツ:安価で清掃が容易。観察をこまめにする初心者に適する。シーツの下にもぐることがある。
  • ヤシガラ:保湿性に優れ、自然感を演出。ダニなどの対策として有効。汚染部がわかりにくい。
  • スネークチップ(例:「チプシー・スネーク」):柔らかく誤飲しても安全とされる木片。衛生的な管理がしやすい。
  • 紙類:高度な飼育部屋単位での温湿度管理がされている前提。水飲み場が倒れる危険性がなく、糞尿で汚れる以外の汚染がない場合はコスパが良い。

世界的にもスネークチップと言われる、蛇用の木くずを細かくしたものが推奨されます。これは他木くずと比べ水汚染時は容易には腐らない、汚染部のみ取り出すことができる。また、誤飲しても細かい為排泄されやすいとされています。対して小動物で利用されている木くずは欠片一つ一つが薄く削られたものです。それ故、水分を容易に吸収し、黒色化し腐りやすく衛生的に蛇には適していないとされています。海外の大規模ブリーディング施設では、スネークチップまたは紙類が使用されています。販売店においてはスネークチップが良いとされています。


温度管理:熱帯環境の再現

■ 温度勾配の設置

  • ホットスポット(日中夜間共32〜34℃):消化促進と体温調節に不可欠。
  • クールスポット(日中夜間共24〜26℃):過熱を防ぎ、行動選択肢を確保。
  • 夜間の最低温度:24℃以上を維持:夜間の為に何かを変える必要はありません。日中夜間共に一貫した温度で飼育することが多くのブリーダーにより推奨されています。

この「温度勾配」は爬虫類全般に必要不可欠な要素であり、熱源にはパネルヒーター+サーモスタットの併用が推奨されます。ただし、サーモスタットの利用はケージが比較的狭い場合の例であり、ケージ温度が35℃以上に上がらない為の対策です。ケージが大きい場合であれば、ホットスポットとクールスポットの明確化が顕著になり過温事故は起こりにくいと考えられます。また、蛇のケージの多くではサーモスタットの利用は困難である場合が多いです。


湿度管理:呼吸器と脱皮の健康維持

ボールパイソンは、適切な湿度環境で呼吸器の健康を保ち、正常な脱皮を行います。飼育下での湿度管理は、以下のように行うことが望ましいです。

推奨される湿度設定

  • 通常時の湿度:60〜80%
  • 脱皮期の湿度:80〜100%

湿度が低すぎると、脱皮不全や呼吸器疾患のリスクが高まります。一方で、過度な湿度はカビの発生や皮膚病の原因となるため、適切なバランスが必要です。

湿度管理の方法

  • 加湿:定期的な霧吹きや、湿度の高い隠れ家(モイストハイド)の設置
  • 換気:適切な通気性を確保し、過度な湿度の蓄積を防止
  • 床材の選択によるケージ内湿度の管理

また、デジタル湿度計を使用して、ケージ内の湿度を常にモニタリングすることが重要です。床材においてはペットシーツなのかヤシガラなのか、スネークチップなのかで大きく異なります。

床材毎の湿度・温度の特徴

  • ヤシガラ:湿度保持能力が非常高く蒸発速度も速いとされることから衛生面は高い、欠片が大きなことから底面が露出しやすく底面のヒートパネルの温度の恩恵を受けやすい
  • ペットシーツ:水の無吸収時は保湿性が皆無、吸水性が高いが蒸発能力は乏しく、水容器がこぼれると交換を要する為マメな観察が必要。シーツの厚さにより、ヒートパネルの温度の恩恵は受けにくい。生体が浸かれる大きさの水飲み場推奨
  • スネークチップ:湿度調整機能はなく乾燥傾向になるも吸水性も高く蒸発能力が高い為衛生面は優れている。床材の形状を個体が好みに変えることができる為、生体自ら好んだ環境を形成できヒートパネルの必要温度も生体に委ねることができる。床に敷く厚さによりヒートパネルの温度恩恵は変わる。生体が浸かれる大きさの水飲み場推奨
  • 紙類:スネークラックで多く利用される。種類により能力は異なる。糞尿以外では汚れない前提での利用想定であり小型の水飲み推奨。ケージ単位ではなく飼育部屋単位での湿度と温度の高度な管理前提の利用が推奨される。

温度と湿度の相互関係

温度と湿度は相互に影響し合うため、両者をバランスよく管理することが求められます。例えば、温度が高すぎると湿度が下がりやすくなり、逆に湿度が高すぎると温度管理が難しくなることがあります。そのため、温度と湿度の両方を同時に測定できるデジタル温湿度計の使用が推奨されます。

海外での温度と湿度管理事例

以下参考動画
06shockwave EU Tour Part3【The Netherlands – Czech Republic】

室内の温湿度管理

  • 夏季は室温27℃、冬季は25℃に設定
  • 温度の切り替えは急激に行わず、段階的に調整
  • 湿度は夏季60%、冬季70%を目安に設定し、エアコンの温度変化に合わせて徐々に変化させる
  • 天井と床の間で温度差が生じないよう、空気循環ファンを使用
  • 加湿器・除湿器を併用し、システム化された自動管理を実施
  • ブリードラックを使用
  • 床材には(おそらく)**スネークチップ「チプシー」**を使用

ケージ内の温湿度管理

  • 給水用の水容器によって、室温よりもケージ内の湿度がやや高くなる傾向がある

インキュベーションルーム(繁殖用)

  • 個室全体をインキュベーターとして構築
  • 室温は31.5℃〜31.6℃で恒温管理
  • 停電などの緊急時に備え、別系統のシステムとサブバッテリーを使用して対応
  • 温度の少しの変化でスマホに通知が来る。

ベイビールーム(孵化直後や幼体用)

常に室温26℃を維持することで、自然な保温を実現

密閉構造により室温がこもりやすいため、特別な加温装置は設置していない


給餌と水分管理

給餌頻度とポイント

ボールパイソンの給餌頻度は、年齢や季節、個体の代謝状態によって調整が必要です。以下は一般的な目安です。

年齢区分給餌頻度餌の種類
ベビー週2回(4日間隔)冷凍ピンクマウス/ホッパーマウス
アダルト週1〜2回
または月1回(フルアダルト)
冷凍ラット、アダルトマウス等
  • 給餌時は必ずピンセットや鉗子を使用し、安全かつ正確に行ってください。
  • 日本の冬季(特に乾燥期)には拒食傾向が強くなるため、無理な給餌は避け、観察を重視してください。

餌の大きさと消化時間

  • 餌はヘビの胴体と同等の太さのものが適切です。
  • 摂取した餌は、消化に約3〜4日を要するとされています。
  • ラットよりハツカネズミを摂取した方が消化負担は少ないとされています。
  • 野生時の観測結果から鳥類の摂取より、哺乳類の摂取結果から体長が長くなると推測されます

餌の解凍と加温方法

  • 冷凍餌はまず冷蔵庫内で半解凍させ、その後36〜38℃のぬるま湯で仕上げて温めます。
  • この温度帯は、ボールパイソンが獲物を“生体”と認識する体温帯に近く、嗅覚反応も良好になります。
  • 日本の一般家庭の給湯器では、蛇口の温水最大設定が60〜75℃程度となる場合が多いため、加温には注意が必要です。直接高温の湯に浸すとタンパク質が変性し、餌の匂いや質が損なわれます。

補足:ベビーの餌の選択肢

  • ベビー個体には、ホッパーマウスが推奨されます。
  • 一部の販売店では、より小さな**ピンクマウス(ハツカネズミの幼体)**を勧めることもあります。個体のサイズや捕食反応に応じて選択しましょう。

日本特有の注意点

日本の冬季は乾燥しやすく、湿度が急激に低下します。これは海外(例:米国南部)における夏季の乾燥とは異なる環境であるため、給餌・脱皮管理における湿度維持が特に重要となります。に伴い拒食傾向が強まります。

餌を食べないときは?

特にベビー個体でよく見られますが、「餌を見せても食べない」という声がSNSなどでも散見されます。
そのような場合、次のような工夫が効果的とされています。

  • 一時的に餌の温度を上げ、匂いを強くする
  • 個体の尻尾を持って軽くぶら下げた状態にし、顔の下から餌をゆっくり近づけて見せる

この方法は、ボールパイソンのとくに若い個体が、野生で枝などにぶら下がって獲物を待ち構える行動に由来すると考えられています。捕食スイッチを刺激するためのひとつの手段として、試してみる価値があります。

水分管理と給水のポイント

ボールパイソンにおける水分管理は、健康維持や脱皮の成功において非常に重要です。脱水は食欲不振や便秘、脱皮不全、腎機能への負担など、さまざまな不調を引き起こす原因となります。

基本方針

  • 常に清潔な飲み水を用意することが原則です。
  • 最低でも2日に1回は水を交換し、汚れやバクテリアの繁殖を防ぎます。
  • 飲水器には安定性のある陶器や重めの容器を用いると、転倒や汚染のリスクを軽減できます。

容器の選び方と設置

  • 基本的には、小鉢程度の水入れをケージのクールスポット側に設置します。
  • 一部では、全身が浸かれる大きめのタッパーや水槽のような容器を推奨する飼育者もいますが、これは湿度管理の不足を補う意図であることが多く、常用は必須ではありません。
  • 特に冬季の乾燥時期や、脱皮前の**「ブルー期」**においては、個体が自発的に水浴びを行うこともあります。

水没行動 ~水浴びに関する補足~

ボールパイソンは水没行動、つまり、全身を水につける行動が見受けられますがそれらは『ケージ内の湿度不足による表皮の乾燥』による行動が示唆されています。ただし、飼育ケージが本当に湿度が低くそのような行動が行われるわけではなく、販売店またはブリーダーの飼育環境が乾燥傾向が強く、飼育者に購入されても以前の様に、脱皮前になると水に入る、やクールスポットの代わりに水に入る。という過去の飼育環境のルーティンがしばらく反映されています。飼育開始からしばらくすると、湿度が安定した環境では、水没行動を起こさないとされています。また、孵化からの成長を観察し湿度に注目した飼育方法では、水没行動を起こさない事が分かっており、水の中に好んで入っているわけではない事がわかります。


学術的な補足:水分摂取と代謝に関する知見

ボールパイソンを含む多くのニシキヘビ科の蛇類は、餌の中の水分(血液・細胞液)と飲水の双方から水分を補給します。

文献:Lillywhite, H.B. (2006). “Water relations of tetrapod integument.” Journal of Experimental Biology. この研究では、爬虫類が乾燥した環境下で「どのように水分保持と摂取を調整するか」が論じられており、ニシキヘビ類は皮膚からの水分蒸発が少なく、飲水と獲物由来の水分に依存することが示唆されています。


ボールパイソンの自家繁殖の方法

〈ボールパイソンの孵化期間。温度と湿度の関係〉詳しい繁殖手段や卵の管理方法はこちらの記事をご覧ください。

→〈【2025年最新版】爬虫類繁殖における必須知識:遺伝の基本法則〉ボールパイソンの遺伝に関する知識はこちらで他サイトより詳細に紹介してます。

購入直後の注意点と初期対応

よくある誤解とその対処法

1. 購入直後に餌を与えない(2週間〜1ヶ月)

新しい環境への適応期間中、ボールパイソンはストレスを感じやすく、食欲が低下することがあります。このため、購入後すぐに給餌を試みるのではなく、最低でも2週間から1ヶ月は給餌を控え、環境に慣れさせることが推奨されます。

2. 拒食は自然なストレス反応であり、必ずしも病気ではない

拒食は、環境の変化やストレスによる一時的な反応であり、必ずしも病気の兆候ではありません。特に新しい環境に移った直後や、脱皮前後、繁殖期などには食欲が低下することがあります。このような場合、無理に給餌を試みるのではなく、環境を安定させ、ストレスを軽減することが重要です。

3. 温度不備による呼吸器感染が最も多い初期トラブル

適切な温度管理がされていない場合、ボールパイソンは呼吸器感染症を発症するリスクが高まります。特に、低温や湿度の不適切な管理は、免疫力の低下を招き、病原体に対する抵抗力を弱めます。呼吸器感染症の症状には、口を開けての呼吸、鼻や口からの分泌物、食欲不振、活動性の低下などが含まれます。

4. 設備の清掃にアルコールの使用は注意

ヘビのヤコブソン器官の化学物質への反応性に関する研究(例:Halpern & Kubie, 1980s)では、アルデヒド類やアルコール類は忌避反応を引き起こす物質に分類されることがあります。ただし、「アルコールに対して特別に弱い」ことを明確に断定する研究は少なく、飼育経験に基づく知見が主となっています。アルコールを使用して消毒した場合はしっかりと換気・乾燥させましょう。


飼育者が行うべき初期対応

1. 毎日温度・湿度をチェック

ボールパイソンの健康を維持するためには、適切な温度と湿度の管理が不可欠です。温度は、ホットスポットで約32℃、クールスポットで約26〜28℃を目安に設定し、湿度は60%を維持するよう心がけましょう。デジタル温湿度計を使用して、毎日測定・記録することが推奨されます。

2. ホットスポットの機器は事前にテスト済みのものを使用

新たに導入する加熱機器やサーモスタットは、事前に動作確認を行い、適切に機能することを確認してから使用してください。特に、ホットスポットの温度が過度に高くなったり、逆に低すぎたりすると、ボールパイソンの健康に悪影響を及ぼす可能性があります。

3. 落ち着くまではハンドリングやケージを開けるなどを控える

新しい環境に慣れるまでの間は、ボールパイソンに対する過度な接触やケージの開閉を控え、静かな環境を提供することが重要です。過度な刺激はストレスを増加させ、拒食や健康問題の原因となる可能性があります。


これらの注意点を守ることで、ボールパイソンが新しい環境にスムーズに適応し、健康を維持することが期待できます。特に、温度と湿度の管理、ストレスの軽減、適切な観察は、飼育初期における成功の鍵となります。


病気の予防と判断

代表的な疾患と原因

症状主な原因
呼吸音、口の泡低温・高湿度または不衛生な環境
消化不良低温給餌、餌の過多、ストレス
拒食繁殖期、環境不適、ストレス
神経障害一部モルフに特有の遺伝性要因(後述)

脱皮不全

蛇類のみならず多くの爬虫類で起こりうる脱皮不全ですが、適した湿度であっても起こる可能性があります。詳しくは別記事で紹介しています。詳しくはこちら→『【最新2025年版】爬虫類の脱皮の原理と行動変化の科学

また、爬虫類全般で起こりうる病気も一覧で紹介しています。詳しくはこちら→『爬虫類で多い病気一覧


設備の消毒や管理

昨今では爬虫類の感染ウイルスなども話題に上がる事があります。多くの販売店において、定期的な機器や設備、使用道具の消毒が推奨されます。

先に記述した通り蛇類へのアルコールの使用は十分気を付けましょう。

爬虫類の設備消毒に関しては別記事をご覧ください。→🦎爬虫類の設備・道具のメンテナンスと清掃方法【完全版】

外出後は手洗い、消毒を徹底し菌の持ち込みリスクを減らしましょう。特に爬虫類店やイベント後など感染対策を意識することをお勧めします。


モルフと遺伝性疾患

モルフの選び方と注意点

  • 高価な個体=高品質ではない
  • クオリティ(色味、模様)と健康状態を確認
  • スパイダー系モルフは**神経障害(Wobble)**が出やすいため注意
  • 「スターゲイザー現象」=神経疾患の可能性

輸入個体に多いリスク

  • 骨折や外傷のある個体も散見される
  • 対面販売時に必ず観察し、健康状態を確認

🧬 ボールパイソンのゲノム解析と色彩変異に関する最新研究

1. ゲノム解析の進展

ボールパイソンのゲノム解析に関する研究は、近縁種であるビルマニシキヘビ(Python bivittatus)のゲノムデータを参照して進められています。これにより、ボールパイソンの色彩や行動に関与する遺伝子の特定が進み、品種改良や疾病研究への応用が期待されています。

2. 色彩変異に関与する遺伝子の特定

ボールパイソンの多様な色彩変異(モルフ)に関与する遺伝子が特定されています。以下は主な研究成果です:

出典:伝的基盤を解明し、遺伝子と表現型の関連性を明らかにする重要な一歩となっています。

アルビノ系モルフ:TYR、OCA2、TYRP1遺伝子の変異が関与しており、それぞれAlbino、Lavender Albino、Ultramelモルフに対応しています。

出典: PLOS

Clownモルフ:MC1R遺伝子の変異が関与し、メラノフォアとキサントフォアの分布に影響を与えています。

出典: PubMed

ストライプモルフ:EDNRB1遺伝子の変異が関与し、縞模様や色素の減少が観察されています。


地理的生態と飼育哲学

飼育における哲学的視点

  • 動物福祉の観点から「体を伸ばせる空間のケージ」でとどまらず、他爬虫類のように大きなケージを利用しリッチメントを多く使用した野生環境を模倣したケージでの飼育が推奨されている。
  • (日本ではない)動物福祉団体がブリードラックの使用をやめるように訴えている。
  • しかし広すぎる環境はストレス要因になりうるとされている。
  • 本種の性質に応じた**「適度な閉鎖性」**の飼育環境が理想

飼育におけるデジタル機器の活用

多頭飼育者向け爬虫類飼育アプリ『RepFun』※Apple限定

当サイト主が自分の為に開発したアプリであり、現在は飼育者向けに対応した無料アプリ(簡易広告あり)。爬虫類を主とした利用を想定し、小動物、観賞魚にも対応。制限のないデータ保存が可能です。

AppStoreはこちら

SwitchBot

多くの爬虫類利用者が利用しているデバイス機器です。WiFi設置環境においてハブと言われる、デバイス統合機器を設置することで、遠隔でのスマホでの状況確認、操作、高度なデジタル化が行えます。温湿度計設置やコンセントに設置することによる自動化などが行えます。また最近では防水モデルなども発売されています。

例:


参考文献

  1. Ullate-Agote et al. (2013). “Genome sequence of the ball python, Python regius”, Genome Biology.
  2. Trape et al. (2012). The Snakes of West Africa, IRD Éditions.
  3. Jacobson, E. (2007). Infectious Diseases and Pathology of Reptiles, CRC Press.
  4. Divers, S.J. & Mader, D.R. (2020). Reptile Medicine and Surgery, Elsevier.
  5. De Vosjoli, P., Klingenberg, R., Barker, D., & Barker, T. (1995). The Ball Python Manual. Advanced Vivarium Systems.
  6. Sillman, A. J., Carver, J. K., & Loew, E. R. (1999). “The photoreceptors and visual pigments in the retina of a boid snake, the ball python (Python regius)”. Journal of Experimental Biology, 202(14), 1931-1938.
  7. Luiselli, L., & Angelici, F. M. (1998). “Ecological relationships in two Afrotropical forest cobra species (Naja melanoleuca and Naja nigricollis)”. Canadian Journal of Zoology, 76(10), 1923-1932.

ギャラリー

記事更新履歴
  • 内容を再編成、繁殖項目を追記、お迎え時の注意点を追記。2024年版に変更しました。(R6.3.23)
  • 内容をAIによるリファクタリングを行い引用論文を新しい物に変更。

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